ギャラリー日記
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●12月28日 本年も今日が仕事納め。 ギャラリー椿にとっては「めでたさも中くらいなりおらが1年」といったところだろうか。 長くお世話になっているお客様や作家さん、画廊主が病に倒れたり、亡くなられたりで、まずは心よりお見舞、お悔やみを申し上げる。 長く仕事をやっているとこうした辛い別れや悲しみを味わうことも多くなる。 自分を振り返り、健康でつつがなく仕事ができることに感謝しなくてはいけない。 これもお客様や作家さん、スタッフ、家族に支えられてのことで、そのことを改めて肝に銘じて、新たな年を迎えようと思っている。 来年も個展や内外のアートフェアーの企画が目白押しで、休む間もないが、皆様の期待に応える作品をお届け出来るよう、作家さん、スタッフともども頑張らせていただくので楽しみにして頂きたい。 日記も今年はロータリークラブのお役目などもあって、忙しさにかまけて滞りがちだったが、来年は合間を縫ってできるだけ多く書かして頂ければと思っている。 来年は戌年、私の干支でもあり、またこの仕事に携わって50年という節目の年にも当たるので、まずはもう一回りの干支を目指して、年寄りの冷や水と言われないよう、熱い汗をかいてみようと思っている。 皆様に取りましても来年が良き年、ワンダフルな年でありますよう願っております。 ●12月18日 昨日は寒い中美術館巡り。 まずは六本木の新国立美術館へ。 ここではシェル美術賞展が開催されていて、取扱作家の井澤由花子、新藤杏子の二人の入選作品が飾られていた。 井澤は昨年もこの公募展で審査員賞を受賞している。 ただ今回の展示は今一つの作品が多く、公募展では一番歴史のあるコンクールだけに、レベル低下が気になるところである。 同時に開催されている建築家の「安藤忠雄展」はチケット売り場も入場口も長蛇の列で、建築家の展覧会にこれほどの人が集まるとは驚きである。 ここは入場待ちの相当な時間がかかりそうなのでパス。 次に向かったのは初台のオペラシティーギャラリーの「韓国の抽象・単色のリズム」で、ここでは韓国内でも高い評価をされるようになった韓国のモノトーンの抽象作品が網羅されている。 このミュージアムにはT氏が2500点を超える作品を寄贈していて、その中には今回展示されているリウーハンを始めとした韓国作家の作品も含まれていて、私どもで収めた作品も多い。 そのうちのリウーハン、郭仁植の大作や鄭相和の版画が展示されていて、懐かしく見ることが出来た。 最後に、東京駅のステーションギャラリーで開催されている収蔵作品展「ドアをあけると」を見に行った。 東京駅丸の内側の工事も終わり、駅前の広場からは東京駅が一望でき、多くの人が東京駅をバックに記念撮影をしていた。 その北口にあるステーションギャラリーは収蔵作品展という地味な展示のせいか、人も少なく、おかげでゆっくりと見ることが出来た。 ここにも私どもで納めた山本麻友香と夏目麻麦の大作が2点仲良く並べられていて、他にも知っている作家の作品が多く、身近に感じる展覧会である。 最後の部屋にはピカソの品が何点か並んでいて、あるところにはあるもんだと驚かされた。 寒い中久しぶりの作品にも出会えて、見に行った甲斐があった。 今日からクリスマスの時期にふさわしい2つの華やかで楽しい展覧会が始まる。 まずは綿引明浩展である。 銅版を切り抜いて組み合わせる技法からスタートした綿引だが、その切り抜き銅版をベースに発泡スチロールや透明アクリル、陶、ガラス等々に展開し、その表現の多様性には目を見張るばかりである。 今回は、新たにアニメーションを作品の中に組み込み、動画とともに作品鑑賞が出来るという楽しい作品が出上がった。 ビデオアートとの一種と言っていいのだろうが、自分の版画をもとにアニメを作り、それを自分の作品の中に組み込んで見せるという発想は綿引らしいアイデアである。 更に彼が考えた技法の一つでガラス絵の応用でもある透明アクリルの裏から注射針で描くクリアグラフと同じ方法で、モノクロで紙に注射針で描く新たな作品も今回発表をした。 こうした作品が所狭しと飾られ、クリスマス気分は否が応でも盛り上がる。 更に奥のスペースでは、華やかな色彩に彩られた高木まどかの立体作品が並ぶ。 彼女も多摩美では木版画を先行した版画家の一人であるが、うちで発表してきたのは版画ではなく、専ら立体作品と刺繍が施された平面作品である。 眩しいほどの色彩に彩られた動物の化身とでも言うのだろうか、可愛いけど気味悪い今風に言うとキモかわいい作品が彼女の特徴である。 現代版ニキ・ド・サンファールという人も多いが、彼女の華やかな色彩は実は和服の模様から生まれたもので、歌舞伎や能の舞台衣装を見てもわかるように、絢爛豪華な色彩というのは日本の伝統的文化にもあって、彼女の色彩はそういう意味では日本の伝統を継承していると言ってもいいのではないだろうか。 二人のウキウキするような個展をぜひご覧頂きたい。 ●12月11日 いよいよ師走。 あっという間の一年である。 恒例の2018年のギャラリー椿カレンダーが出来上がってきた。 今回は小林健二の表紙を含め13点の作品がカレンダーを飾る。 小林が登場するのは初めてで、これは私の友人の会社がこのアーティストカレンダーをロゴを変えて使っていて、抽象作品がそこの会社のクライアントに向くかどうか難しいところで遠慮をしていたのだが。 今年久しぶりの個展を開いたこともあって、こちらの勝手で小林の作品を使うことにした。 今年のギャラリー椿のカレンダーも残すところ一枚となり、寂しい気もするが、これが終わると新たなカレンダー。 皆さんに気に入っていただけるといいのだが。 ご希望の方は500円にて頒布するので、画廊宛てに問い合わせていただきたい。 ●11月24日 先の渡辺達正に続いて、同じく私どもで発表を続ける室越健美が多摩美大を定年退職することになり、その退官記念の展覧会が多摩美大の八王子キャンパス内で開催されていて、ぎりぎりになってしまったが、ようやく見ることが出来た。 本来であれば、多摩センターにある多摩美術大学美術館で開催されるのだが、本人はそうした晴れがましいことをしたくなかったようで、長年授業を続けたキャンパス内の展示場で、「2EPOCHS」と題して一つは日本の古典絵画をオマージュした大作が並び、もう一つにはコーネルに触発されたボックスアートが展示されている。 更には制作の現場であるアトリエが再現されていて、作品が生まれるレアな状況が浮かび上がる。 現代美術の範疇に入るのだが、日動画廊や高島屋での発表が続き、近代美術の枠組みの中に組み込まれてしまったように思えるが、その感覚やモダンさは日本的な抽象表現の文脈の中で語られるべきではないだろうか。 私も長い間関わってきて、その洗練された美しさに魅了されているのだが、今回改めて2つのセクションで作品を眺め、その独自の表現力と感性の豊かさには驚かされた。 過去の作品ばかりだが、今一度私の画廊で再現してみたい展覧会である。 退官記念にふさわしい展覧会と言っていいだろう。 ●11月22日 東京西北ロータリークラブの例会で、パトロンプロジェクトの菊池麻衣子さんに卓話をお願いし、パトロンプロジェクトの取り組みについてお話しをしていただいた。 タイトルは「〜未来のピカソ達が集うアートサロンを目指して〜」 パトロンを勘違いした会員もいたが、皆さん熱心にアートの話に耳を傾けてくれた。 中でも一番興味を持ったのは、中古物件の空室問題をアートで解決するアートルームプロジェクト。 不動産関係の会員から「面白い取り組み!」と名刺交換をする会員もいた。 アーティスト&大家さん双方がハッピーなアートルームプロジェクトが更に広がって行くのは間違いなし。 お忙しい中を菊池さんありがとうございました。 ●11月21日 新宿にある佐藤美術館で開催中の「吾輩の猫」展に来ている。 夏目漱石生誕150周年に因んだ企画である。 私どもで発表をしている岩淵華林や呉亜沙を始め70名の現在活躍中の作家がそれぞれの吾輩の猫を描いている。 新宿には「漱石山房記念館」が開館し、私どものロータリークラブでも設立にあたり寄付をさせていただいていて、この展覧会もそうした意味では遠いつながりがある。 親しみやすい猫がテーマだけに、どこか身近に感じる展覧会で、12月24日までなのので、一度覗かれたらいかがだろうか。 ●11月18日 伊津野雄二展が今日から始まった。 いつものことながら、伊津野の女性像は端正な表情と柔らかな木肌がとても愛しく、見る人をホッコリさせる。 淡々と刻まれた飾り気のない作品だからこそ、そっと心の隙間に忍び込み、陽だまりのようなぬくもりを与えてくれるのだろう。 夏に開催された信州の美術館の展示は広い会場に芳しい静謐感が漂い、その居心地の良さは得も言われぬ心持ちにさせられたが、今回の展示も小品が多いにも関わらず、それに負けず劣らずの心地よい空間を作り出してくれている。 癒やしのひとときを味わって頂きたい。 ●11月15日 韓国のテグアートフェアーの特別交流展に鈴木亘彦と山本麻友香が招待された。 そのブースでオリジナル作品を展示するとともに、イメージを体験者がバックの上にシルクスクリーンで刷って持ち帰るワークショッププログラムが企画され、うちでアルバイトをしていたキムソヒがその指導をし、入場者には人気のブースとなったようだ。 ●11月9日A 岩渕華林の装丁本がまた「ジゼルの叫び」に続いて発刊された。 11月2日に出ているのだが、長野まゆみの新刊「さくら、うるわし左近の桜」角川書店の装画を担当した。 海外からも装丁の依頼が来たりで、海外でも彼女の作品が知られるようになってきたのだろうか。 この本の前巻では装丁を望月通陽が担当したそうで、出版文化賞ブックデザイン賞を受賞した彼に続くような活躍をして欲しい。 また7日から始まった「現代作家70名が描く、つくる〜吾輩の猫展」佐藤美術館にも初めて猫を描いた作品を出品している。 テーマを与えられることで、彼女の表現のバリエーションが増えていくようだ。 これからも期待したい。 ●11月9日@ 来週月曜日に控えた、私がホストのロータリークラブの大きなイベントの準備に追われ、日記を更新できないままでいて、すでに終わってしまった多摩美術大学教授渡辺達正の多摩美術大学美術館で開催されていた退官記念展の紹介がすっかり遅くなってしまった。 渡辺とは彼が助手時代からの付き合いで、それから50年多摩美に在職し銅版画一筋で定年を迎えることになったのだから、年月の速さに驚いている。 今回の展示は美術館の一階、二階を使い、100点をこす作品が並び、彼の軌跡をたどることが出来た。 それは壮観で、初期作品から現在までの変遷は、私の今まで抱いていた観念を一掃するものであった。 私は今まで彼は技術にこだわりすぎ、表現が二の次になっているのではと思っていたのだが、今回の作品の変遷を見て、これだけ表現が多様なものになっていたとは、長年見てきた私の不明を恥じるばかりである。 銅版画というのは他の版画に比べてもプロセスが多く、そのための道具も多様で、当然それを使いこなす技術も必要となる。 そこばかりを追求していくと、アーティストいうよりは職人の分野にはいってしまい、技を極めることが終局の目的となってしまう。 渡辺は学生たちに技術の必要性を常に説いていて、そうした面では多くの銅版画家の中でも稀有な作家であった。 自分で銅版の目立ての機械を作り、特許まで取得したり、銅版画の道具のコレクションは半端でなく、今回の展示でも一室にそうした機会や道具も展示されている。 そういう面ばかりを見ていたこともあって、表現は疎かになっていくのではと危惧していたのだが、銅版画一筋50年は伊達ではなかった。 2つのフロアーに飾りきれない作品はまだ千点を超すというから、その旺盛な制作量にも驚きを禁じ得なかった。 実際を見ていただけるとその辺の事はよく分かるのだが、すでに展覧会は終わってしまった。 しかしながら、点数は少なくなるが、厳選をさせていただき、来年3月の正に、大学を去る時期に、私どもで発表をすることになっているので、その時にご自分の目で確かめて頂きたい。 ●11月2日 11月に入り、小春日和の秋らしい天気になってきた。 昨日はロータリークラブの仲間と100年前に日本にロータリークラブを創設した米山梅吉翁の三島にある記念館を訪ねてきた。 長い間ロータリークラブに在籍しているが、この地を訪ねるのは初めてである。 ロータリーでは米山翁の名前を冠した奨学金制度「米山奨学金」というものがあり、会員の浄財により、今まで1万数千名の世界の若者がこの奨学金により日本で勉強をする機会を得ている。 台湾ではこの奨学金をもらって、現在社会で活躍している人たちだけのロータリークラブが2つあり、ここでの会合は全て日本語で行われているそうだ。 これは日本独自の奨学金制度だが、これとは別に世界のロータリークラブの基金を集めて行われる留学制度「ロータリー財団留学制度」というものがあって、これは世界各国から相互に高校生が留学をし、勉強と同時にその国の文化を広める親善大使の役割を担っている。 この学生たちは各国のロータリアンの家庭でホームステイをしながら学校に通うことになっていて、私もアメリカ、ブラジルの子どもを預かっていたことがある。 ロータリークラブそのものが、世間ではあまり知られてなくて、クラブが所属する地域での社会奉仕活動や、世界の貧しい子供達や難病に苦しむ子供達のための国際奉仕活動、前述のような青少年奉仕活動を通して、そこに携わる人達との交流を深めているといったことを広く一般に知ってもらい、それに賛同する人たちの入会を募っている。 来る11月13日にはそうした活動に対する研修会が開催され、私がホストとして担当する地区のロータリアン約800名を集め、貧困地域や紛争地域で青少年奉仕事業に携わっている方や、その制度で留学の後、社会で活躍をしている若者たちによる講演会「青少年奉仕とロータリーの役割」と題した会を催すことになっている。 大役を担当することになり、緊張の度が増しているが 、所属クラブの仲間が実行委員会を作り、準備から運営まで全ての段取りをしてくれているので、私はただお神輿に乗っているだけなので、多少は気が楽だが、それでも当日が滞り無く終わってくれることを考えると、胃のあたりが重くなってくる。 とにかく無事に終わることを祈るばかりである。 ●10月31日 美術手帖9月号のアートナビ欄に私のインタビュー記事が2ページにわたって紹介された。 美術手帖のようなアカデミックな美術雑誌は私には縁遠いと思っていたが、小林健二展が同じアートナビに紹介されたこともあって、それをきっかけに私を紹介する流れになったようだ。 一推し作家と私の宝物ということで、まず一推しは紹介記事のご縁があった小林健二を推すことにした。 小林健二は望月通陽とともに、私どもでは一番付き合いの古い作家ということと、9年ぶりの個展を開催したばかりで、その感慨もひとしおということも重なり、一推し作家とさせていただいた。 そして私の宝物は、多分今までアートナビで紹介された皆さんは取って置きの作品をあげるのだろうが、私は昨年6月に90名の作家さんが企画していただいた私の古希と開廊35周年の展覧会の折の展覧会カタログと感謝状をあげさせていただくことにした。 長い間画廊をやってきたご褒美として、私にとっては一生の宝物となった。 インタビューでもそのことに触れさせていただき、作家さんへの感謝の気持ちとさせていただいた。 本屋さんで手に取る機会があればご覧いただきたい。 ●10月28日A ギャラリー椿の会場では、恒松正敏の友人でもある写真家.廣瀬忠司の「KUSABI」と題した私どもでは初の個展である。 この個展も今はなきツァイト・フォト・サロンにて20年前の個展以来の久しぶりの発表となった。 錆びた鉄板の表情と造形として捉えたくさびをテーマにしたプリントとシルクと写真を合わせたネオシルクプリントという新しい版画表現を試みている。 「時間と痕跡」という主題に取り組んで来た廣瀬の集大成とも言える迫力ある展示である。 ●10月28日 今日から11月11日までGT2 にて3年ぶりに恒松正敏個展が開催される。 と言っても新作は一点だけで、病気療養中のため30年前の旧作を中心に回顧的な展覧会となったが、心霊的な表現とともに当時からの巧みな描写力がうかがえる展示となった。 私も初めて目にする作品も多く、恒松ファンにとっても大変興味深い個展ではないだろうか。 ●10月26日 台湾も涼しかったが東京の寒さは台湾帰りにはかなりこたえる。 まだ10月というのにどうなっているんだろう。 台北のフェアーは最終日を待たずに帰国したので、結果はまだわからないが、初日の喧騒は尻すぼみで、何となく消化不良気味である。 ただギャラリー椿ブースの人だかりは他を圧倒していて、途切れる間がなかった。 写真を撮る人で溢れかえり、立体作品が倒されるのではないかと気が気でない。 こうした人気をどう売り上げに結びつけるかが今後の課題でもある。 そういう意味では中村萌のケースが参考になるかもしれない。 彼女の作品を求める人達の多くはトイショウに出品されるフィギュアを見てファンになった人が多く、続々ブースに詰めかける人達に何かしら作品を持つチャンスを提供することで、それなりのコレクターの育成に結びつけることができるのではないだろうか。 今は沈滞気味だが、日本のコレクターの裾野を広げることになったのは版画の存在が大きい。 もともと日本には浮世絵という世界に冠たる版画の歴史があり、また60、70年代に棟方志功、池田満寿夫、浜口陽三、駒井哲郎といった版画家達が次々に国際コンクールでグランプリを受賞したことも版画の普及に貢献し、日本独自の版画市場が形成された。 複数あることで価格も安く、またオリジナル作品と違って、代表作や受賞作品を手に入れる可能性も大きく、版画ファンの拡大に繋がった。 現在は若手のオリジナル作品が版画と同じような価格になったことや国際的な版画コンクールが少なくなり、世界で注目を浴びるような作家も少なくなり、版画市場は逆風が吹いているのは寂しい限りではあるが。 どちらにしても、版画やフィギュアといった複数作品から新たな顧客層の獲得を考えてみようと思っている。 ●10月21日 東京も雨が続き季節外れの寒さのようだが、台北も降ったり止んだりの天気で、いつもの蒸し暑さは影を潜め、上着がないと寒いくらいである。 本日は土曜日ということもあって、大勢のお客様が詰めかけている。 相変わらずの撮影大会で、彫刻が倒されるのではないかとヒヤヒヤ。 人は多いが売り上げはさっぱりで、ポストカードばかりが売れている。 向かいの香港の画廊は抽象作品の大作ばかりが展示されているせいか、ほとんど人がブースに入らないのに、いつの間にかほとんどの作品に赤印が付いているから驚いた。 いつの間に売れたのだろう。 人がたくさん来てくれると喜んでばかりはいられない。 ●10月19日 今朝は朝から大変なことになっている。 先日のトイフェアーの中村萌フィーバーが台北アートフェアーに波及したのだろうか。 毎年人気の中村だが、今年はちょっと異常だ。 昨日の展示の時からお客様がやって来て 、中村の作品を予約したいと言ってくる。 フェアーの事務局にも問い合わせが来ているという。 公平を期して、皆さんにはスーパーVIP対象のオープニング12時から先着順でとお伝えした。 ところがまだ準備時間である10時には既にお客様がやって来ていて、12時前には40人近いお客様がブース前で待っている。 これでは収拾ががつかなくなるので、あみだくじを皆さんに引いてもらうことで了解していただいた。 ということで、12時とともに展示の木彫作品はくじ引きで決まってしまい、他に用意したドローイングも20数点が瞬く間に売れ、終わってみると3点しか残っていない。 大変ありがたいことだが 、トイショーのオークションでも1点だけ主催者に頼まれて出品したが、何と売価の10倍の値段で落札されてしまった。 あまりのフィーバーぶりに驚かされるが、この流れにあがらうわけではないが、うちらしく地道に紹介をしていこうと思っている。 この騒ぎでもう一つ驚かされたのが、一番くじと三番くじに当たったのは毎年中村作品を買ってくださるお客様で、この怒涛のような騒ぎの中でこんなこともあるんだとびっくりしている。 騒ぎに乗じたお客様よりは最初から応援してくださるお客様に作品が渡ったのは嬉しいことである。 こんな騒ぎの中でフェアーはスタートしたが、他の作家にも目を注いで欲しいものである。 ●10月18日 台北アートフェアーがいよいよ始まる。 展示はスタッフに任せて、まずは台湾画廊協会理事長、韓国画廊協会事務局長とともに日本の文化庁にあたる台湾文化部の張代表を表敬訪問。 1時間ほど日台韓の文化支援などについて懇談させていただいた。 ついで、貿易センターの特別室にて会議と晩餐会。 今回任期終了となる議長国の新たな選任ということで、韓国と台湾から私に議長をとの話をいただいたが、私は日本側の代表だが、日本の全国美術商連合の常務理事で理事長ではないので、その任は難しいと固辞させていただき、選挙での選任ということになり、結果韓国の李理事長が議長となり、2年の任期を務めることとなった。 因みに、李さんは韓国の前防衛大臣の奥様でもある。 台湾の画廊協会では前年に続いて、分厚いアジアパシフィックの美術市場の分析と統計の資料本が発刊され、その報告がなされた。 画廊協会の下にシンクタンクの研究機関があり、そこが調査をしてまとめたものである。 終えて豪華でヘルシーな台湾料理が振る舞われ、1日を終えたが、展示はまだ終了してなくて、そのまま会場に駆けつける。 スタッフ達はフル回転で展示をしていて、今回は特に大きな立体があり、展示の最中に疲労からか通訳が吐いたそうで 、こちらはご馳走を食べたりしていて、気の毒なことをした。 なんとか終了時間の10時には展示だけは終えることができた。 ●10月17日 今日から台北。 明日はアジアパシフィック画廊協会会議と歓迎晩餐会に出席し、明後日からは23日まで行われるアート台北に参加する。 出発の時にハプニング。 手持ちの作品が大きいこともあって、大型荷物検査場に移動。 行ってみると警察が何人かいて、物々しい雰囲気。 南米系の人が空港職員に囲まれ、何か説明をしている。 その先の検査台に何とピストル二丁実弾らしきものが10発ほど置かれていて、事情が飲み込めた。 男にピストルでも振り回されたらと思わず身構える。 そんなこともあって一向に検査ができず、結局真反対にある検査場に移動。 早めに行ってラウンジでゆっくりするつもりが、とんだことにぶつかってしまった。 何とか間に合い無事台北に到着。 今日は予定がないので、スタッフとホテル近くの韓国料理屋で夕食。 台湾第一夜が韓国料理とは、これも空港同様に想定外だが、フェアーでは想定内であることを願う。 ●10月16日 夏目展を紋谷さんが紹介をしていただいたので転載させていただく。JUGEMテーマ:美術鑑賞 ギャラリー椿(中央区京橋3-3)では、 夏目麻麦(Asagi NATSUME)展。 会場風景。 展覧会タイトルは、-Nights Out-。 じんわりと沁み込んでくるような絵画です。 着衣の女性が一人、描かれています。 場所や状況は示されませんが、 日常のほんの一場面のようです。 絵画から得られる情報は以上です。 それ以上の詳細は「塗りつぶされて」います。 巧みな抽象化です。 具体的なものを筆で消し去り、 デッサンがしっかりしている分、 その、筆で消し去った筆跡(行為)だけが残ります。 女性の個性ではなく、「思い」が浮遊しています。 再現的で、写実的でないので、見る者は開放され、 現実社会では味わえない 濃密さに包み込まれる。 そんな印象でした。 作品と部分詳細。 作品と部分詳細。 作品と部分詳細。 作品と部分詳細。 作品と部分詳細。 作品と部分詳細。 写真:筆者撮影 ●10月14日 現在釜山で開催中の山本麻友香個展も好評との報告を受けた。 山本の体調もあって、当初の予定より作品が間に合わず、開催も危ぶまれたが、なんとか山本に頑張ってもらい開催にこぎつけることが出来た。 ただ新作が少なく、旧作も交えた個展ということになり、主催の画廊も不安のスタートとなった。 それでも、作家を元気づけるためにも結果を出したいと言っていて、その通りの嬉しい報告が届いた。 画廊主自身も昨年から体調を崩し、画廊も息子さんに任せるといった状況が続いていたが、今回の結果が元気になるきっかけになってくれるといいのだが。 ●10月11日 夏目麻麦展が好評である。 お世話になっている三島太郎氏より、何よりのうれしいコメントを頂いたので紹介をさせて頂く。 昨日から京橋のギャラリー椿で始まった夏目麻麦展がとても良いです。 画像で見ても良いのですが実物を見るとまただいぶ印象が違います…とか書いてると、なんかたどたどしくて子供の作文みたいですが、これはなかなか言葉にするのは難しいのですよ。 表面的なところではマルレーネ・デュマスやベーコンを思い起こさせるとかいろんなことを言えますが、夏目さんの作品の魅力の本質的部分はそういうところには(たぶん)ないのですね。 今回の作品を見た時の感動は、夏目さんがこれまでに蓄積してきた技量や感性、そして(私は何も知りませんが)彼女の「生」そのものが今、キャンバスの上で結合し、とても生々しく表現されている、その瞬間を見て感じることのできたライブな喜びとイコールなのです。 その作品の様式は別として夏目さんの作品は優れて同時代的でリアルなアートであり、そういうものから伝わってくる感動を私のような素人が言葉でどうのこうの言ってもしょうがないかなと。 日・祝日はお休みで今月21日までです。 お時間ありましたら是非。 ●10月10日 台北のトイショーが三日間の会期で始まっている。 年々盛況になり、今回で4回目になるが、今年はさらに盛り上がっているようだ。 主催者から毎年中村萌が招待されていて、今回もブースにてフィギュ―やオリジナルの木彫、ドローイングなどが展示された。 スタッフから多忙のなか報告が届いたので、一部紹介させて頂くが、内容から中村萌の人気ぶりが伺える。 バタバタしておりまして、報告が遅くなりすみません。 6日は、2時くらいに会場つきましたが、3フェイス100個にサインするなどしていたら、12時ぐらいまで作業かかってしまいました。 growMの実物は、30個しか間に合わず、のこりの50個はオーダーをとる言うことで、若干の不安があるなか、終えました。 7日は、初日。 入場をくじ引きで決めるということで、かなり混乱して4000人ぐらいがなかなか入場出来ずに待たされて、10時開場の予定が、12時ごろにやっと入場がはじまり、そこからは怒涛のように人が押し寄せ、30個の実物は、1時間でなくなり、5時には、オーダー分も含めて、80個完売になりました。 並んでいても買えない人がいる状況でした。 オリジナルも、同時にどんどん買われましたが、今回は、一切値引きなしで皆さん払ってくれました。 3フェイスも、翌日の8日に100個のうちの85個分は完売しました。 今は、ポストカードとドローイングを販売しております。ドローイングも11枚、大体3万円前後ですが、売れてます。 明日は、最終日です。 相変わらず黄さんは、終わったらご飯に連れて行ってくれるなど、良くしてもらってます。 取り急ぎ、ご報告まで。 ●10月7日 夏目麻麦展が今日から始まった。 手前味噌だが、すごくいい。 うまく表現できないのだが絵が深く感じられる。 マティエールが深いのは以前からなのだが、表現自体が深淵に感じられるのは私だけだろうか。 描かれた人物は曖昧模糊としていて、鮮明には描かれてはいないのだが、逆にそれが効果的なのか、見る人はじっと立ち止まり、人物の前で釘付けにされてしまう。 人物も表面ではなく、その奥の何かを感じ取ろうとしているのだろう。 その人物も以前は静止していたが、今回は一瞬の動きを取り入れている。 その表情は相変わらずぼんやりとしているのだが、絵全体に動きとともに表情が出てきたようにも思える。 初日ではあるが、かなり沢山の人が画廊を訪れ、熱心に見てくれるのはありがたいことで、上々の出足である。 ●10月4日 今日は中秋の名月。 ようやく秋らしい天気になり、朝晩が過ごしやすくなってきた。 今週末から内林武史と夏目麻麦個展が始まる。 丁度、内林作品に中秋の名月にふさわしい作品があるので紹介させて頂く。 他にも郷愁を誘う作品が多く展示され予定である。 |
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