ギャラリー日記 |
●9月30日 久し振りの台風直撃の今日、泰明画廊社長・川田哲也氏の葬儀が執り行われた。 幸い、台風は夕方過ぎから影響を受けるとのことで、式は滞りなく行われた。 4月に癌が発見され、その病魔は急速に身体を蝕み、30キロも体重が減ってしまったというが、それでも仕事の意欲は失うことなく、亡くなる直前の2日前まで画廊に来ていたとのことであった。 大変面倒見のいい方で、創業40年を今年迎えるそうだが、創業以来の社員が一人も欠けることなく画廊に勤務していることでも、そうした一面をうかがえる。 また弔辞を読んだ古川元久国家戦略担当大臣も、学生時代にシンワオークションの倉田社長とともに川田家に住み込み、子供同様に可愛がってもらったそうで、その弔辞は政治家の言葉ではなく、涙声に震えながらのもので、参列した人の心を打つものであった。 心からご冥福をお祈りする。 そんな矢先にまた訃報が入った。 名古屋のギャラリー野田の野田社長が急性心不全にて満57歳で急逝されたとの知らせであった。 川田社長も71歳でまだまだ活躍してもらわなくてはいけない年齢だったが、野田氏はそれよりひと回り以上も若い死だっただけに、ただただ驚くばかりである。 さぞかし無念の死であったろう。 ご冥福をお祈りする。 ●9月29日 台北アートフェアー用の作品がぼちぼちと集まってきた。 順に紹介をさせていただく。 私共の個展や銀座三越のアートソムリエ・山本冬彦氏推薦の「珠玉の女性アーティスト展」でも好評だった岩渕華林の40号2点。 先の台北ホテルフェアーで完売した森洋史の大作3点 台北で初の平面作品・高木まどか 昨年の台北フェアーで話題の森口祐二 ●9月28日 「日本の美術教育を考える」と題して、京都造形大学・東北芸術工科大学の外苑キャンパスで4回にわたり著名アーティストなどによるシンポジウムが開催される。 送られてきたポスターから引用させていただく。 今、日本の美術教育は危機を迎えている! 中学、高校の美術教育が激減し、専任の美術教員がいない学校も増えている。 芸術系大学を志望する学生も減り、世界に通用するアーティストも出にくい環境だ。 世界に通用するトップアーティスト(変化する市場の評価で売れるだけではなく、その相対評価の世界を超え、絶対評価で生き残れるアーティスト)が生まれなければ、当然その裾野は広がらない。 女子サッカー「なでしこ」と同じ原理だ。 美術大学間で争うのではなく、オールジャパンでアーティストを育てる仕組みを考える必要があるのではないか。 世界で活躍を続けるアーティストや、教育に関心を持つ人々で、日本の芸術教育を考えるシンポジウムを開催したい。 第1回 10月3日 19:30〜 茂木健一郎・やなぎみわ「規格外サイズのアーティストが生まれる教育環境とは?」 第2回 11月30日19:30〜 大竹伸郎 「教育 でアーティストは育ち得るのか?」 第3回 1月9日 19:30〜 佐藤卓・杉本博司 「世界標準の表現者の学びとは?」 第4回 1月16日 19:30〜 西沢立衛・名和晃平 「世界で通用するアート教育とは?」 コーディネーター 宮島達男 教育だけで世界的アーティストが生まれるとは思わないが、美術教育の危機という問題提起としてはおもしろい試みである。 ●9月27日 江戸川競艇場内にあるリニューアルオープンの江戸川アートミュージアムに行ってきた。 桑原弘明、小林健二、ムットーニ、荒木博志、深堀隆介など超絶技法の作品が並び、夢ワクワクのミュージアムである。 競艇場は滅多にいけない所なので、桑原弘明の個展の最中の日曜日12月16日に江戸川アートツアーを実施する予定。 詳細はいずれお知らせするが、アートを楽しみ、昼食付き、競艇で一攫千金もありの盛りだくさんツアーに是非のご参加を。 もうひとつ今日は復元工事が完成した東京駅内の東京ステーションギャラリーの内覧会があって、こちらにも顔を出させていただいた。 「始発電車をまちながら」と題し、東京駅と鉄道をテーマにした現代アートでこけら落としとなった。 古くからのレンガ壁を残していて、そちらの存在感が強くて、現代アートのインスタレーションが浮いてしまったように感じ、これからの開館でどの程度入場者に理解してもらえるか難しいところである。 内装もモダン過ぎて、復元された外観や赤レンガ壁とはそぐわない面があり、以前のギャラリーのような入場した時の厳かな雰囲気が無くなってしまったのが寂しい。 これは東京駅のすぐ目の前に出来た郵便本局にも言えることで、昔ながらの建物に現代建築が乗った形なっていて、着物にハイヒールのようなちぐはぐさがいま一つしっくりこない。 ●9月26日 アートコレクターズ10月号は最新立体アートと題して、オブジェ作家100人が紹介されている。 その中に私共で発表した呉亜沙、浅井飛人、北村奈津子、牧野永美子、川崎広平、中村萌、儀保克幸、COPPERS早川等が紹介されている。 更には先日取材に同行したT氏宅が立体コレクターということで紹介されている。 1ページに膨大なコレクションを載せるのは難しく、更には展示へのこだわりを持つT氏の空間演出の全貌が見られないのが残念だが、その一部が紹介されている。 私共では他にも小林健二、望月通陽、木村繁之、桑原弘明、綿引明浩、間島領一、岡田露愁、寺池厚志、リ・ユンボク、伊津野雄二、内林武史、高木まどか、小川陽一郎、大屋和代、宮本宗輝など新旧多くの作家が立体を発表しているが、T氏はその殆どの作家の作品をコレクションをしている。 その中でも小林健二の代表作は殆ど持っているといっていいほどのコレクションがあり、他にも若林奮、加納光於、青木野枝などの代表作も多数コレクションをしていて、その多くを展示しているから凄い。 今の時代と違って立体作品がなかなか売れない時代から、いち早くこうしたオブジェ作品を集めた慧眼には頭が下がる。 平面作品の展示は壁に限度があるが、立体作品は階段であったり、天井から下げたり、家具の一部を使ったり、探せばいくらでも利用できると、家中にオブジェ作品が展示されていて、ミニ美術館と言っていい。 そうした作品を常に入れ替えて並べるのが、氏の大きな楽しみとなっている。 ●9月25日A 慶州市市長から先だっての慶州アートフェアーへの参加のお礼状が来たので、原文をそのまま転載させていただく(少しおかしい日本語もあるが)。 日韓関係が悪化している中にあって、このような丁寧な礼状をいただくとうれしいものである。 写真のような立派な書状もいただいた。 これでビジネスもうまく行けば言う事ないのだが。 拝啓 貴廊ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。 慶州市長のチェ・ヤンシクです。 8月30日から5日間、新羅二千年古都の慶州で開催された‐率居の絵画市場『アート慶州2012』−にご厚情にあずかり、厚くお礼申し上げます。 特に『アート慶州2012』にご参加いただいた日本の画廊の皆様に心を込めて感謝致します。 室内体育館を活用し、アートフェアのイベント会場として相応しいよう最善を尽くしましたが、初めての開催ということで不十分なところもあったことと存じます。 何卒ご理解のほど、宜しくお願いいたします。 慶州は創作活動に適切なところでございます。 天恵の自然景観と共に先祖のきらびやかな文化遺跡の歴史的な雰囲気が、芸術創作の意欲を高めることと確信しております。 今回のイベントを通して、慶州は、国際的な観光都市はもちろん、文化芸術都市として背伸びし、慶州市の文化的な価値を知らせ、新たな形を魅せた貴重なきっかけになったことと存じます。 2013年(平成25年)には、今年より更に発展した『アート慶州2013』を開催することを約束致しながら、皆様のご声援及びご参加をお待ちしております。 5日間の間、画廊の皆様から頂いたご協力、並びに、慶州市民の芸術に関する愛情に改めて感謝致しながら、これからの皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。 まずは、略儀ながら書中をもってお礼申し上げます。 敬具 ●9月25日 我が巨人軍がぶっちぎりで優勝し、こんなにめでたいことはない。 いつもはハラハラドキドキで見ていたが、今年は最初だけ歯がゆい思いをしたものの、後は安心して見ることが出来た。 次のステージも勝ち上がって、3年前のように是非銀座パレードをやってもらいたい。 画廊のすぐ前も通るはずなので、その時は一家あげて声援を送りたい。 それに引き換え、モンゴール場所を終えた大相撲は何とかならないものだろうか。 ハワイ場所が長い間続き、それがモンゴール場所に変わって久しい。 国技という言葉さえ恥ずかしくなる。 去年だったか知人の紹介で、日本人大関の稀勢の里と向島の料亭で食事をしたことがある。 おとなしいとてもいい青年ではあったが、オーラというか気迫というか勝負師特有の雰囲気が感じられなかった。 これまた大昔に藤島親方の現役時代の貴の花とも料亭で食事をする機会があったが、こちらは身体は小さいが風格というか重みというのか、勝負師が持つ迫力が感じられた。 横綱にはなれなかったが、名大関として名を残し、息子二人を横綱にしたのもさもありなんである。 柔道がJUDOとなって、日本のお家芸とは行かなくなったのと同じように、こうなったら相撲も国技の看板を捨てて、SUMOに名を変え、重量別にでもしたほうが余程すっきりする。 ●9月24日 泰明画廊の川田哲也社長が亡くなられたとの訃報が入った。 最近はお会いする機会がなく、だいぶ痩せられたと聞いて心配していたのだが、突然の知らせにただただ驚いている。 私が昔に勤めていた大阪の梅田画廊の先輩で、当時は新宿にあった京王梅田画廊の店長をされていた。 その後独立し、泰明画廊を設立した。 私が勤めていた頃は梅田画廊の全盛期で、支店を含めると約80名の従業員を抱える画廊の規模としては日動画廊と並ぶ大画廊であった。 その後,梅田画廊から独立して画廊を出した者も多いが、その中にあって川田氏は一番の出世頭となった。 画廊以外にもシンワオークションの設立メンバーの一人として活躍し、業界団体の理事長を勤めるなどその功績は大であった。 少し前になるが、画廊に訪ねて来て、時代のあまりに早い変遷について行くのが大変だとこぼしていて、海外のことなどを色々と尋ねられたが、上海に支店を出すなど、すぐに新たな展開に乗り出すのには驚かされた。 尊敬する先輩の死に、ただただ呆然とするばかりである。 ご冥福を心よりお祈りする。 ●9月21日A 恒松展、北村展も24日の最終日まで後僅か。 北村作品の羊は顔つきの作品はほぼ完売で、何と天井から下がる1から100までの番号をまとめて買ってくださる方もいた。 ご自宅の寝室に天井からつり下げて、1から順に数えながら眠りにつけるなら、きっといい夢を見れるに違いない。 恒松展も今夜は自身のアコースティックライブ。 60歳の還暦を迎えた彼だが、現役バリバリのハードロックミュージシャンと画家の2足のわらじ。 血管張り裂けそうな音量は私は身体が持たないが、アコースティックということで何とか持ちこたえられそう。 ●9月21日 11月の前半の日程が決まった。 7日の午前の便で台北へ、当日台北フェアーの展示。 8日午前中に注文の大作をお客様の別荘に搬入、設置。午後に会場に戻りオープニング。 9日から12日まで台北フェアー 12日台北フェアー撤収 13日早朝台北から釜山経由でテグへ。 14日テグフェアー展示とオープニング。 15日から18日までテグフェアー 18日テグフェアー撤収 19日早朝テグ出発、釜山から成田へ、11時からの山本麻友香展初日にぎりぎりセーフ。 以上約2週間休み無しの強行スケジュールで、こうなったら韓国でもらった朝鮮人参エキスを飲んで頑張るしかない。 ●9月20日 昨日は東京駅の八重洲口にあった不忍画廊が日本橋高島屋のすぐ横に移転をすることになり、その開廊記念パーティーに行ってきた。 老舗画廊だけに大勢のお客様や画廊主が早くから来ていて大盛況であった。 長谷川利行から呉亜沙まで新旧の作家の作品が並び、画廊とともに歩んできた作家の軌跡をうかがい知ることが出来る。 この界隈は大手の古美術商や日本画商が軒を連ねるが、銀座にあった西村画廊等も移転し、新たなアートゾーンがその一角を占めることになった。 私のところも以前は多くの画廊が集まり、賑わいを見せたが、再開発で多くの画廊が移転してしまい、以前の賑わいがなくなったのが寂しい。 それでもようやく周辺の巨大ビルが完成間近となり、この界隈にも今一度多くの画廊が集まり、賑わいが戻ることを期待している。 ●9月18日 中山競馬場近くの完成間近の老人ホーム「銀木犀」に井澤由花子の作品を納めてきた。 「銀木犀」は玄関に木彫が飾られ、天使の羽のついた照明、ステンドグラスなど夢一杯の老人ホーム。 若き経営者S氏の夢が実った素晴らしいホームである。 私もいずれはお世話にならなくては。 ●9月15日 もうすぐ立秋というのにまだまだ真夏の陽気でひたすら暑い。 プロ野球のペナンとレースもそれ以上に熱い。 我が巨人軍が絶好調で、優勝までいよいよカウントダウンに入った。 我が家は家内も子供たちも全て巨人ファン。 下の娘の旦那がこれまた熱狂的な巨人ファンで、生まれてまだ9ヶ月の娘に巨人軍の服と帽子をかぶせて悦にいっている。 昨日は友人と東京ドームに行ったみたいで、逆転劇を目の当たりで見て、さぞかし興奮したに違いない。 特に阪神をねじ伏せるというのが、私達巨人ファンにはたまらない。 毎晩のスポーツニュース、朝刊の野球記事を何度も何度も見直しては勝利の余韻に浸っている我が家である。 仕事にこれくらい熱くなるといいのだが。 ●9月14日 今日は日本版画商協同組合の秋季大会。 業界が不景気の中、出来高は大幅アップの昨年同時期の5割増し。 草間弥生の版画が溢れるように出てくるが、びっくりするように高い。 ルイ・ヴィトン効果なのだろうか。 奈良の版画も私の想像を遥かに超える高値で落札されて行く。 それに引き換え、著名な近代美術作家の油絵が、草間の版画の半分も行かないのはどうしたものだろうか。 日本美術の評価の大きな転換期に来ていることをまざまざと感じさせる一日であった。 ●9月12日 以前に日記で紹介をした41歳で交通事故で亡くなった彫刻家・森亮太の遺作展が、生まれ故郷の館林市にある群馬県立館林美術館での開催が正式に決まった。 さてそうなると作品を集めなくてはならず、その依頼で担当の学芸員の方が画廊に見えた。 若くして亡くなり、それほど多くの作品を残しているわけではないのだが、それでもいざリストを見ると、私どもで納めた作品は相当数あり、20年も前のことであり、その所在を把握するのは並大抵ではない。 既に他界している方、モニュメントを納めさせていただいた会社が、別会社に会社ごと売り渡してしまったり、会社自体が破綻してしまったところ等など、思い出すだけでも色々な事情がある。 その当時は彫刻は個人のコレクターが持つことが少なく、会社関係が多かっただけに、こうした事例が多くなるのだろう。 また、所在がわかっていても、恒久設置されていて、移動が難しいケースもある。 12月22日の開催までにどの程度集めることが出来るか、亡くなった森さんのためにも何とか頑張るしかない。 ●9月11日 韓国の日記の写真をアップするのにてこずったが、何とかアップできたので、8月31日の日記から載せさせていただいた。 ご興味のある方はどうぞご覧いただきたい。 昨夜は美術雑誌アートコレクターの取材で、編集のH君と一緒に30数年に及ぶお付き合いをさせていただいているコレクターのT氏のお宅を訪問。 次回号が立体特集ということで、立体作品を多数コレクションしているT氏が登場することになった。 T氏はただ作品を集めるのではなく、その展示にも気を配っていて、台座や棚を自前で購入し、照明にも気を配り、T氏独自のセットアップをする。 そうすることで作品は新たな息吹が吹き込まれ、その輝きを増幅させる。 そうした作品が常に100点ほど飾られていて、行くたびに模様替えがされている。 コレクションと同じ情熱を展示にも注いでいるわけで、制作した作家達にとってこれほどうれしいことはない。 雑誌でどの程度臨場感を出せるかわからないが、コレクションの一つの楽しみ方として見て頂けると幸いである。 ●9月10日A 日曜日は先日私どもで発表した井澤由花子が吉祥寺の画廊で個展をやっていて、暑い中を見に行ってきた。 春夏秋冬を描いた小品が新しい一面を見せていて良かった。 それにしても暑さはひとしおで、涼しかった韓国が懐かしい。 光州のフェアーも今日が最終日、現地の人に任せっ放しで気になっていたが、持って行った日本人作家の作品も全部売れ、韓国作家もそれぞれに売れたようで、一安心である。 慶州ではいま一つだったが、光州でそれなりの成果が上げられたことで、ハードスケジュールをこなした甲斐があったと喜んでいる。 ●9月10日 韓国での日記が滞ってしまい失礼しました。 日にちが前後するのと、退屈な文章が長々と続くがお許しいただきたい。 9月3日A 最終日の撤収もアルバイトのスタッフ達が手伝ってくれたお蔭であっという間に終了。 たいした成果は上げられなかったが、事務局をはじめスタッフ達のホスピタリティーは大変なものであった 明日、郵便局から返送する日本の画廊の荷物も大きな車を用意して、通訳の女性二人がホテルに迎えに来て、郵便局まで連れて行ってくれるという。 あとで聞いたが費用も日本から送るよりはうんと安く、10万円かかるところが2、3万で済むという。 私のところの通訳のヘランちゃんも良く気が付く可愛い娘さんで、別れが辛くなるほどである。 ホテルに戻り、日本の画廊さんと通訳の子達も交えて打ち上げ焼き肉パーティー。 その後は若い連中に混じってうちの奥さんはカラオケに。 慶州最後の夜はだいぶ盛り上がったようだ。 9月4日 今日は光州への移動日だが、夕方に彫刻家のユンボク君が迎えに来ることになっているので、それまでは観光に行くことにした。 ホテルからタクシーで世界遺産に指定されている石窟庵と仏国寺へ向かう。 石窟庵はタクシーを降りて、山道を20分ほど歩くのだが、急な階段がきつく、息絶え絶え。 次に向かった仏国寺ではタクシーを降りると早々に中年の男性がやってきて、世界遺産の所なので、無料で案内をすると流暢な日本語で話かけられ、言われるままに後をついて行くことにした。 それぞれの史跡で詳しい説明をしてもらい、いくつものビューポイントでは家内と二人の記念写真を撮ってくれる。 これだけ親切にしてもらうとただというわけにもいくまいと、チップをいくらにしたらいいかと思案する。 ところがどっこい、案内が終わるとこの男性は土産物屋の主人で、近くの店には奥さんが手ぐすね引いて待ち構えていた。 結局、この辺で採れるアメジストのアクセサリーを買わされる羽目に。 ただほど高いものはないを身を持って体験。 お昼は毎日の韓国料理にいささか食傷気味になっていることもあって、ホテルの日本料理店で鍋焼きうどんを注文したが、なんとマルちゃんの緑のたぬきを鍋に入れただけの代物。 美しい慶州の街で親切な人達に感激していただけに、今日は肩すかし気味である。 迎えの車で4時間かけて光州に移動。 9月5日 光州アートフェアーの会場は金大中大統領を記念して建てられた立派なコンベンションホールで規模も内容も慶州とは格段の違いがある。 こちらは私どもで発表した韓国作家を中心に展示。 開会式も盛大に開かれ、私もテープカットに参加。 光州には日本の画廊は私のところを含め3軒しか出てないが、知り合いの韓国の画廊がたくさん出ていて心強い。 明日は光州ビエンナーレも開幕し、光州美術館ではリウーハンの展覧会が開かれるなど、光州の街はアート一色に包まれる。 せっかくの機会なので見に行きたいのだが、今回展示しているリソンスーのお母さんが光州の有名なファッションデザイナーで、明日ソウルで開かれる盛大なファッションショーに私達夫婦も招待され、早朝の飛行機でソウルに向かわなくてはならない。 そのお母さんのブティックが光州市内にあり、フェアーの始まる前に案内される。 大きなビルの中にはブティック以外にデザイン室や縫製工場、コンサートホールまであるから驚く。 そこで家内は明日のショーに着ていく洋服をプレゼントされる。 何から何まで至れり尽くせりで恐縮しっぱなしである。 お昼も光州は韓国でも料理が一番おいしいところと言われていて、この地ならではの肉や牡蛎をその場で衣に包んで焼いてくれる光州ちぢみをご馳走になった。 こうしてみると毎日ご馳走攻めで、仕事に来ているよりは観光に来ている気分である。 フェアーの方は手伝ってくれる地元の人に任せて、明日はソウルに向かうことにする。 9月6日 飛行機で光州からソウルへ。 台風以外は天気に恵まれ、朝晩は爽やかな秋の風情で、過ごしやすい日が続く。 光州でいただいた服を着込んだ家内と一緒に、ホテルの近くにあるファッションショーの会場に向かう。 会場は韓国の青山といわれるチョンナムにある企業が持つ大きなギャラリーである。 以前にトム・ウェッセルマンをやっいて、見に来たこともあり、美術館のようなギャラリーで、すぐそばには娘さんが任されているブティックビルがある。 ファッションショーを見るのは初めての経験で、その華やかさに酔いしれた。 招待客250人には豪華な料理が振る舞われ、お土産には息子のソンスウ君の絵がデザインされたスカーフまでいただき、ここでも至れり尽くせりの歓待であった。 終わって屋上のテラスでチョンナムの夜景を見ながら、ワインやコーヒーを片手にしばしのセレブ気分を味わった。 明日は長い韓国滞在を終えて、早朝の便で帰国する。 行く前に心配していた日韓問題による反日感情も全く感じず、逆に心からの歓迎をしてくれたことに感謝したい。 文化は強しである。 ●9月8日 韓国から昨日帰ってきました。 早々に恒松正敏展、北村奈津子展の展示を終えて、今日初日を迎える。 恒松展も私共では10回ぐらいにはなるだろうか。 今回は原点に戻ってと、小品35点を並べた。 小さなアトリエで描くには小品が程よいサイズのようで、今回は無理せず恒松らしさに溢れた作品が並んだ。 案内状にもなったガラス絵も10点ほど描き、、水墨画で発表していた鮎や蛙、ざりがに、蟹なども油彩画となって新たな一面を見せている。 ドローイングあり、初期作品風あり、内容も多岐に渡っていて、長年の恒松ファンにはたまらない展覧会となっている。 GTUでは北村奈津子のオブジェ展。 眠れない夜に数える羊の数をテーマにたくさんの羊が会場に並び、天井からは1から100までの数字が垂れ下がり、それを見るだけで眠気を誘う。 睡眠不足気味の方には必見の展覧会である。 ●9月3日 いよいよ最終日。 土、日は人も多く賑わったが、どの画廊も売り上げは今一つ。 慶州市はまだまだアートは浸透してないようで、コレクターと言われる人は少ない。 それでも今回は出品していないが、山本麻友香の名前は知られていて、絵はがきを見てはその名前を口にする人も多く、韓国での人気が伺い知れる。 テグの画廊から来年の個展の依頼を受けたり、来春にはソウルでの個展も決まっていて、更には釜山でも今年に続いて紹介をさせて欲しいとも言われていて、その調整が大変だ。 決して景気がよくない韓国でも、こうした話をいただけるのは大変有難いことである。 今回持って行った作品では夏目麻麦の作品が人気で、作品を見て、多過ぎず、少な過ぎずとの感想をメッセージに託してくれたドイツ在住の韓国人女性が購入を思案中で、大作だけに決まってくれると有難いのだが。 慶州市市長も彼女の作品は素晴らしいと言ってくれたり、中には彼女の作品の前に佇み、涙を流している女性もいた。 主催者側の気遣いもなかなかのもので、昼、夜お弁当が出たり(ただ毎日同じ内容なので正直いって食傷気味)、昨夜は終わってからライトアップされた遺跡巡りのツアーも企画され、暫し慶州の歴史の一端にも触れることが出来た。 ●9月1日 土曜日になり、ようやく大勢の人が詰め掛けるようになった。 昨日、慶州市長主催のレセプションが盛大に開かれ、その様子がテレビで流れた。 その影響ももあるのだろう、ようやく引き合いが来るようになり、ディーラー相手の作品が何点か売れてはいるが、その他はさっぱりだっただけに、なんとか成約に結びつけたい。 今回は今までのフェアーとは違った作家構成で、それも大作をメーンにしただけに、どの位の反応があるか不安もあったが、成果は別にしても、まずまずの反応にほっとしている。 それと驚くのは来場者の中に大勢の中学生や小学生が友達や家族と連れ立って来ていることである。 日本のフェアーではこうした光景はまず見られないが、まだ現代アートが浸透していない慶州にあって、こうした子供たちが熱心に見入る姿には、心打たれた。 教育の違いなのだろうか。 ●8月31日 台風一過爽やかな天気になった。 昨日無事に展示も終わりオープンには間に合った。 とはいえ人出は今一つで初めての慶州のフェアーだけに予想されたことではあったが。 慶州は古い遺跡や寺院があり世界遺産にも指定されている美しい都市として知られる。 今回のフェアーは慶州市が観光だけではなく文化にも力を入れようと始めたもので、かなりの予算を割いて援助をしている。 ただソウルや釜山、テグに比べて人口も少なく、観光以外は大きな産業もないことから、アートマーケットは今一つで、これからの発展に期待するところである。 心配された日韓問題の影響は全く感じられず、大歓迎振りは相変わらずで昨日も昼、夜とご馳走攻めであった。 また2つのテレビ局からインタビューを受け、夜のニュースで流れたようだが、古い伝統文化を持つ慶州で日本のアートを紹介する機会を設けていただいたことに感謝するとともに、更なる日韓の文化交流が深まることを願っているといった話をさせてもらった。 今夜は慶州市長主催のパーティーがあって参加することになっていて、フェアーにかける熱い思いは伝わるが、アートの浸透にはまだまだ時間がかかるだろう。 ●8月28日 やはり台風の影響で釜山行きの飛行機は欠航となり、途方にくれている。 釜山行きはこの一便しかなく、ロスアンゼルスからのソウル行きに変更できるそうだが、これが何時に着くかわからず、結局明日の便で行くことにして、成田のホテルに泊まることにした。 展示などの準備がぎりぎりになるが仕方ない。 相変わらず天気には恵まれないが、災い転じて福となるように願う。 ●8月27日 オークションが無事終了。 猛暑と不景気でどうなることやらと心配したが、200点近くが落札され、金額もまだ集計されていないが昨年よりは伸びたようで一安心。 開札の時も、いつもなら大勢の人が詰めかけ、落札結果を熱心に見ているのだが、2人の方しか見えず、意外と余裕で結果待ちをしているようだ。 内容を見てみると、名前の通った作家の作品はほとんで落札されず、また風景や花といったアカデミックな絵も敬遠されたみたいだ。 やはり私共に見えるお客様は作品本位と価格の兼ね合いで選ばれていて,業者の会やデパートさんの展示会などとは一線を画している。 今週土曜日まで不落札の作品を展示しているので,アフターセールということで、今度は早い者勝ちの表示価格プラス手数料で購入することが出来る。 まだご覧になっていない方や落札できなかった方は是非お越しいただき、私が韓国から帰ってきた時には壁面に何も残っていないことを願う。 ●8月26日 A ギョッ!天気図を見ると何と台風は沖縄を通って韓国に向かっているではないか。 影響ないどころか、とんでもないことになりそうで、飛行機が飛ぶだろうか。 前にも韓国滞在中に台風が来たり、韓国観測史上最悪の集中豪雨が3日間降り続いたり、突然の大雪に遭ったりで、相変わらずの嵐を呼ぶ男だが、まさかまさかの大型台風。 日本本土を避けてと願えば韓国へ、韓国に行くなと願えば日本本土に、あちら立てればこちらが立たたずの心境である。 恐らく向こうに私が行けば韓国に、残れば日本にという事になるのだろうか。 いやいや私のせいではなく、韓国の大統領発言や行動に天が怒ったのかもしれない。 何とか日本に謝罪をしてもらい、台風を鎮めてもらいたいものだ。 ●8月26日 「風が吹く、吹く・・・やけに吹きゃァがる」の石原裕次郎の歌・風速40米でも凄いが、沖縄に風速70米の史上最高級の台風が接近中だそうだ。 大きな被害にならないといいのだが。 多分影響は受けないとは思うが、来週火曜日から韓国の慶州、光州のアートフェアーがあって、10日ほど出かける。 慶州は慶州市肝いりの新しいアートフェアーで、そのフェアーの代表が親しくさせていただいている画廊さんで、日本美術の紹介を今回のメーンにするということで相談いただき、私を含め親しくさせていただいている5軒の日本の画廊が招待されることになった。 画廊のブースだけではなく、VIPルームにも5画廊が推薦する作家の作品が展示される。 また初日には、慶州市市長主催による晩餐会も開かれ、私達を歓迎してくれるようだ。 慶州が終わった翌日には、光州フェアーに向かわなくてはいけないが、光州に行くのは交通の便が悪く、いったんソウルに戻って飛行機で行くか、長時間バスに揺られて行くしかない。 それを見かねて、彫刻家のリ・ユンボク君が忙しい合間を縫って、慶州に車で迎えに来てくれて、そこから光州まで送ってくれることになった。 光州フェアーは昨年に続き2回目だが、昨年は現地の人に任せっぱなしにしていたので、今回はせめて初日だけでも顔を見せなくてはと強行スケジュールになってしまった。 その後、同時期に開かれている光州ビエンナーレを見たいのだが、光州フェアーの出品者の一人り・ソンスーのお母さんが有名なファッションデザイナーで、ソウルでファッションショーをすることになっていて、それを見にこれまた翌日ソウルに向かうというから忙しい。 画廊も今日までのオークションの片付けと落札作品の引渡しや送付で忙しいため、スタッフの手が足りず、家内が韓国に同行することになっているが、慶州フェアーは終了時間が毎日夜9時までとなっていて、移動の忙しさと相俟ってぶーぶー言われるのが目に見えている。 ●8月25日 とどまるところを知らないこの暑さ。 オークションも明日までだが、この暑さの中を大勢の方にお越しいただき感謝である。 初めての方も多いようで、画廊のHPかFBなどで知ったのだろうか? 案内状も作らず、過去の入札者に簡単な作品リストを送るだけなのだが、それでも多くの方に来ていただけるのは大変ありがたいことである。 出品のほうも前回までは限られたお客様からのものだったが、今回は多くの方から出品いただき、内容も多岐にわたり、バラエティーに富んだオークションとなった。 元々は京橋界隈の催しの一環として始めたものだが、それが私ども単独でやるようになり、私どもの夏の風物詩として定着した。 私が以前に社長をしたオークション会社・JAAの方式を踏襲し、入札形式を取っていることから、競り方式とは違い、熱心に作品の品定めをして、それからどのくらいの価格にするか思案するといった方式が、お客様の楽しみでもあるのだろう。 また専門のオークション会社や、業者のみのオークションと違い、市場性のない作品もたくさん出品され、名前とかキャリアではなく、作品本位で選んでもらえるのも、私共のオークションの特長である。 こうした形を取ることで、お手放しになる方の受け皿となり、新たな命を吹き込み、その作品を生かす役割を担なっていると自負している。 そうでなければ、こうした作品は行き場を失い、粗大ごみと化してしまう可能性さえある。 手間ばかり掛かり、暑い時期に大変な思いをしなくてはならないが、少しでもお客様のお役に立つことが出来ればとスタッフ達も頑張っている。 明日の午後5時前までだが、鑑賞も兼ねて、お時間のある方のお越しをお待ちしている。 ●8月24日A 展示会場の入口には案内状にもなった福沢一郎や鶴岡政男、脇田和、中村宏などと並び山本麻友香の初期の油彩画が飾られ、その横には香港のオークションに出て落札を依頼された鵜飼容子の作品が飾られている。 第一室から順に日本近代美術史を彩る個性派作家の版画や油彩画が並び、最後の部屋に若手作家がまとめて展示されている。 その中に山本と奈良美智の作品が数点づつ並んで展示され、世界の奈良に負けてないぞ! また開光市の作品もあり、これだけ錚々たるコレクション中で一番高く買った作品だとキャブションに書かれているから驚きで、如何に上手に集めたかが伺いしれる。 これだけのコレクションぜひ東京をはじめ各地を巡回して欲しいものである。 ●8月24日 日記でも紹介した「F氏コレクション展」も終わりに近く、暑さもあって行くかどうか迷っていたのだが、美術館からコレクションの図版が送られてきたこともあって、急遽行くことにした。 氏の厳しい鑑賞眼と底知れぬ情熱と執念で選び抜かれた個性溢れる250点の作品は、それは見応えのあるもので、個人コレクションの真髄を垣間見せてもらい、さしづめハーブ&ドロシーコレクションの日本版と言っていいだろう。 パンフレットのF氏からのメッセージの抜粋を紹介させていただく。 1974年佐渡の高校教師T氏邸を訪れた際、ピカソ・マチス・ルオーなどの版画コレクションが飾られ、島の高校生に本物を見せてやりたくてと、その意図に共感するも、一介の美術教師は羨望するのみであった。 その数年後、豊橋の新設画廊で娘が興味を抱いた元永定正の版画が手頃な値段でつい親馬鹿振りを発揮。 そのはずみは大きく、銀座の画廊で鶴岡政男、小山田二郎を購入したのがコレクションの発端か。続いて浜田知明、脇田和、清宮質文の版画、そして興味をいだいた新進画家ー娘が好む山本容子、奈良美智など。 つい最近となり井上長三郎、森芳雄、麻生三郎等々。 尊敬する美術教師に見せると悉く下手だねと一蹴されたが、好きに変わりなく、美術手帖に原色版に出て理解に苦しんだ福沢一郎の作品など、何れも廉価で入手出来たことは夢の如き事実。 私が惹かれたのは、一見稚拙に映るが然れど云々と謂う、とは一目瞭然か、概ねご理解いただけるであろう。 これらの作品群が美術館の知るところとなり、夢のまた夢の実現、感激感激、感慨無量。 T氏の弁に倣い、高校生のみならず一人でも多くの方に鑑賞していただけたら、その甲斐あり、望外の喜びとなろう。 私は、この展示会場に住み込み、寝食した挙句に墓場としたい、とは夢のまた夢の夢か・・・。 ●8月23日A これまた読む気が失せてしまうよな朝日新聞の記事が出ていた。 「ニセ鑑定書の絵画流通」との大きな見出しで、東京美術倶楽部の鑑定書が偽造されて、偽物の絵に付けられて売買されるケースが相次いでいるという。 以前から言われていたことだが、これだけ大きく取り上げられると大問題である。 倶楽部の鑑定書があるかないかで市場価格に大きな影響が出るだけに、作品よりも鑑定書の威力が一人歩きしてしまった結果とも言える。 美術業界にとって真贋の問題は切り離すことの出来ない重大なテーマである。 古今東西、偽物はいつの世にもついて廻るものだが、要は欲と道連れで騙されることが多く、私共に来るケースも借金の形にとったり、名前だけで安く買ってしまったというような話が多い。 それを防ぐことから鑑定書が必要になるのだが、鑑定書の偽物を作るのは絵画やお札を作るより容易く、更には日本のオークション会社は鑑定書がないと受け付けないということもそうした事件に拍車をかけることになったのだろう。 また記事にも出ているが、今の法律では、手さえ挙げれば誰でも鑑定家になれるため、余計に合議制の倶楽部の鑑定書の信頼度が高まる結果、それを逆手に取ったのが今回の事件とも言える。 と言って、倶楽部の鑑定が100%かというとそうでもなく、藤田嗣治などは日本のオークション会社では倶楽部の鑑定書がないと受け付けてくれないが、クリスティーなどは倶楽部の鑑定書がなくても向こうの判断で受け付けてくれる。 また有名画家の遺族や取り扱い画廊が、鑑定の権利を巡って裁判で争うケースも出ていて、鑑定についても色々な問題を含んでいる。 因みに、ある作家の遺族が提訴したケースは、美術倶楽部が発行する鑑定書の一部となる写真が著作権の侵害にあたると訴えたが、公共の利益に鑑み著作権の侵害にはあたらないとの判決が高等裁判所で出ている。 海外でも鑑定については色々な問題があり、シャガールなどの著名作家の作品を海外の鑑定に出して、もし偽物と認定されると、何十億円で買ったものでもその当事国に没収されてしまう。 また、鑑定代も送料などを含めると数十万にのぼり、安易に鑑定に出すわけにもいかず、鑑定とはなかなか厄介なものである。 丁度タイミングよく、私共のオークションに出品される東郷青児の水彩画の鑑定が取れて、先程作品とともに画廊に戻り、展示を終えたところである、やれやれ。 ●8月23日 暑さがひとしお。 高校球児たちは大したものである。 地区の予選から決勝まで進むには、この暑さの中を相当数の試合をしなくてはいけない。 それを耐えて栄冠をつかむのだから、日ごろの鍛錬、技術はもちろん、その体力と頑張りには大いに敬意を表したい。 最後に負けた敗者も同様である。 春夏を連覇した大阪桐蔭も凄いが、3度も決勝まで進んだ光星の偉業も大いに讃えなくてはいけない。 オリンピックでも日本人選手の活躍に多くの人が歓声を上げ、銀座でのパレードの盛り上がりも、スポーツが如何に多くの人たちの感動を呼び起こすかの証である。 勝っても負けてもそのひたむきさが人の心を動かすのである。 それに引換え、昨今の政治家には国民に感動をもたらすようなひたむきな人達は一人もいない。 スポーツ紙の一面の華やかさに比べ、一般紙の一面の暗い記事には意気消沈するばかりである。 党利党略、弱腰外交、未来図が描けないエネルギー政策、経済無策、上げればきりないが、新聞の見出しだけで読む気が失せてしまう。 我が巨人軍が快進撃なので、スポーツ欄だけはご機嫌で見ているが、何とか一面にスポーツ以外で勇気を奮い起こすような記事が出ないものだろうか。 ●8月22日 明日からはギャラリー椿オークションが始まる。 山本冬彦氏と曾根原正好氏がブログで紹介をしてくださった。 曾根原氏には入札の方法まで詳しく紹介していただいたので転載させていただく。 8月23日から京橋のギャラリー椿でオークションが始まる。 オークションは8月23日(木)、24日(金)、25日(土)、26日(日)の4日間。誰でも自由に入札できる。 出品点数が500点以上も予定されている。 ギャラリー椿は銀座・京橋地区でも特に大きなギャラリーだが壁面はぎっしりと作品で埋められるだろう。 全部見るのが大変だとも言えるし、それが楽しいとも言える。 気に入った作品も必ずあるだろう。 出品リストを見ると、作家名、作品名(種類)、最低落札価格、素材・技法、サイズ・エディション、体裁、備考の欄がある。 最低落札価格は文字どおり最低の入札価格だ。 全体に低価格の傾向で、一番高い作品の最低落札価格が45万円、多くは5千円や1万円の作品だ。 しかし最低落札価格が1万円以下のものは無保証としますとある。 つまり真贋は入札者の判断に任せられる。 入札方式は1人2枚札によるもの。 これは希望価格の上値、下値の2つを記入する方式で、他に入札者がいなければ下値で落札されるが、競合した場合は上値で落札するというもの。 もちろん相手の入札した金額がそれより上なら相手のものになる。 入札の最小単位は100円とのこと。 なお、落札した場合は、落札価格に別途ギャラリーの手数料が10%、この手数料に対して消費税が5%加算される。 10,000円で落札すれば、手数料1,000円と消費税50円がかかり、合計11,050円が支払い金額になる。 オークションは11:00ー18:00、入札締め切りが8月26日(日)16:45、開札が同日17:00からとなっている。 入札しなくて見るだけでも大丈夫。面白いのでぜひ行かれることをお薦めする。 出品リストはギャラリー椿のホームページでみることができる。 ●8月21日 山本冬彦氏が選んだ80年代生まれの女性作家たちによる展覧会が銀座三越で下記の通り開催される。 私共からは岩渕華林が選ばれ出品することになっている。 山本冬彦氏のブログより みなさん、残暑厳しい中お元気でしょうか?すでに多少は予告していましたが、9月早々に銀座三越ギャラリーで以下の企画展を行いますので改めて紹介させていただきます。 今回はアート普及と若手作家支援の一環として多くの方に見ていただきたく、便利で入りやすい銀座三越のギャラリーで開催させていただきます。 特に現役のビジネスパーソンの皆さんに多様な作品を見てもらい、お好みの作品がありましたらお部屋に飾っていただきたいとの思いから、1980年以降に生まれた若手作家の作品を選びました。 デパートですので夜8時までやっていますのでお仕事帰りや週末などでお時間がありましたらご覧ください。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【企画展の概要】 『山本冬彦が選ぶ- 珠玉の女性アーテイスト展』 ■会期 平成24年9月05日(水)〜11日(火) ■会場 三越銀座店8階 ギャラリー ■企画概要 アートソムリエとして有名な、山本冬彦氏×銀座三越の現代アート入門企画。 現代アートには興味があるが、ちょっと敷居が高い・よくわからないと感じている多くのお客様に、山本氏の30余年に及ぶサラリーマンコレクターの経験をもとに、アートの見方や蒐集の楽しみ方をご提案します。 今回は山本氏の推薦する1980年代生まれの女性作家たちによる多様な作品を見ていただきます。 ■9月5日 午後6時から レセプション ■9月8日 午後2時から ギャラリートーク ●8月19日 日曜日は暑い中を府中美術館に行ってきた。 「親子で旅する展覧会」と銘打ち、親子で美術の見方・楽しみ方を体験する展覧会である。 私どもで寺田コレクションを通して納めさせていただいた山本麻友香や呉亜沙、富田有紀子の作品も展示されていて、山本、呉はそれぞれ描かれたペンギンやうさぎの絵が型抜きされて、観光地でよく見られるように、顔を出して子ども達が記念撮影が出来るようになっている。 また、子ども達の感想や俳句が絵の下に貼り出されていて、その数が10になるとシールが一枚づつ貼られ、子ども達の人気作品が一目でわかるようになっている。 それを見ると、府中ゆかりの児島善三郎や正宗得三郎をはじめとする著名な近代美術作家達より、上記の三人や曽谷朝絵、小西真奈といった現代の若手作家に人気が集中していて、子ども達の関心も今の時代を反映していることがよくわかる。 他にも、岡本太郎や富田の絵を模写したり、折り紙のコーナーがあったりで、子供たちの夏休みの自由研究には絶好の機会で、親子連れや子ども達のグループで大いに賑わっていた。 ●8月18日 家を出ようとすると、雷鳴とともに激しい雨が。 駅のホームに上がった途端、いきなり目の前でピカッ・ドーンときたから驚いた。 あまりの衝撃に髪の毛が逆立ち、心臓が縮み上がった。 昨日あたりから天気が不順になり、折角のお盆休みで山や海に出かけた人はお気の毒。 私も今夜、友人の招きで多摩川の花火大会に行くことになっているが、果たしてどうなることやら。 友人の会社が二子玉川にあり、多摩川に面して全面ガラス張りになっていることから、特等席で花火が見れるそうだ。 250人ほどを招待し、食事やお楽しみ賞品も用意されているそうなので、中止になると大変なことになる。 雨男の私が行かなければ何とかなるのだろうが、どうやら花火ではなく稲妻を見ることになりそうだ。 ●8月17日 今日も蒸し暑さはひとしお。 周りはお盆休みのせいか静かなもの。 画廊も殆どがお休みで、いつも画廊廻りをする方も全く目にしない。 そんなわけで、画廊の見苦しい倉庫状態もお客様の目に触れることなく仕事は捗りそうだが、お客様が一人も見えないのも寂しいものである。 汚くしてるが、涼みがてらの絵画鑑賞に是非のお越しをお待ちしている。 ●8月16日 夏休みを終えて、多少過ごしやすくなったかと思っていたら、今日はまたいつもの暑さが戻ってきた。 昼を食べて帰る道すがら、汗だくのお兄さんに呼び止められた。 両手に桃の箱を抱えていて、買ってもらえないかとすがるような目つき。 汗びっしょりに頑張っている姿にうたれて、いくつか買ってあげることにした。 どこかに車を置いて、この界隈を売り歩いているのかと思っていたら、電車に乗って手で運んできたんだそうだ。 昔、田舎のおばさん達が担ぎ屋さんといって、背中にお米や餅、野菜、果物を一杯に背負って、遠くから電車に乗ってやって来て、一軒一軒売り歩いている姿が思い出される。 領収書まで書いて、もし不味かったり傷んでいたら、領収書の宛先に電話をしてくれたら取り替えると律儀なことまで言う。 帰って開けてみると美味しそうな桃で、福島産と書かれてあった。 成る程と思いつつ、福島の人たちはこんなに大変な思いをしているのだなと、改めて震災の影響に想いをめぐらした。 もっとたくさん買ってあげればよかったのかと汗だくの青年の姿が心残りであった。 スタッフも汗だくでオークションの準備中、夏らしい涼しげな展示をしていた画廊の中も、オークションの出品作品で埋まり、暑苦しい姿に様変わり。 尚、オークション出品リストを本日更新したので、夏休み前にリストを送付させていただいた方も、改めてご確認いただきたい。 今年も約500点の出品が予定されている。 ●8月15日 コレクターの集まり「美楽舎」のコレクション展が近くのK'Sギャラリーで開催されている。 私共でもお世話になっているお客様も何人かこのメンバーに入っていて、楽しみに拝見させていただいた。 有名作家から無名の作家、版画からオブジェ、洋画、日本画とそれぞれが好みの作品を出品し、数寄者コレクターならではの展示となっていて、興味深い。 時流に乗らず、投機目当てでなく、作品本位で選ぶ、本物のコレクターがいてくれることに、敬意を表したい。 他にも、12日で東京での展示は終わってしまったが、その後千葉、埼玉、長野と巡回する「わの会」のコレクション展、18日からワンピース倶楽部のコレクション展、そして日記でも紹介させていただいた豊橋市美術館での「F・Mコレクション展」と、この夏はコレクション展が目白押しである。 ●8月14日 夏休みが終了。 早速に23日から始まる開催するオークション準備にスタッフは大忙し。 休みは河口湖で孫達の相手と畑仕事、それにゴルフとオリンピック観戦と休む間もなく、分厚い本を何冊も持って出かけたが、1ページも開くことはなかった。 そうした中で、孫達と出かけた明野にある「ひまわり畑」が絶景で、これには眼を見張った。 河口湖周辺ではいくつかの花の公園があるが、時期にもよるのだろうが期待はずれが多い。 昨年5月の連休に、長い行列の中を見に行った芝桜祭りも、花はちらほらで、ピンクに染まったパンフレットの写真とは大違い。 いるのは中高年のおばさんばかりで「うば桜祭り」ではとうっかり呟いて、かみさんに叱られた。 忍野にある「花の都公園」も地元の人は「草の都公園」と言っているそうだ。 ひまわり畑も多分その類と期待もせずに、娘に連れられて行ったのだが、行ってみてびっくり。 一面に咲くひまわりの壮観さに、娘とかみさんはソフィア・ローレンになった気分で酔いしれていた? 私はマルチェロ・マストロヤンニといったところだろうか? 恒例の花火大会「河口湖湖上祭」も間近で見ることができ、こちらも夜空に咲く花の彩りにしばし目を奪われた。 孫も音に驚き、泣き叫ぶのではと心配したが、ご機嫌で見入っていた。 娘親子が帰ると、入れ違いに息子家族やってきて、ごろごろと寝返りを始めた孫娘と歩き始めたばかりの孫息子にハラハラドキドキ、来てうれし、帰ってうれしの孫との夏休みであった。 ●8月4日A GTUにフォトコレクションを展示しました。 アラーキー、蜷川実花、大月雄二郎、岡本啓、渡辺大介、KOH・SANG・WOO等 休み明けに是非のお越しをお待ちしている。 ●8月4日 連日の暑さに比べると多少過ごしやすくなったような気がするが、暑さ慣れしてきたのだろうか。 先日受けた大腸検査の結果を聞きに行ってきた。 小さなポリープが一つ見つかり取り除いたそうだ。 病理検査ではポリープはまだ小さくグループ3の段階だそうで、良性だがポリープが大きくなると癌に移行する可能性があるとのこと。 少なくとも2年に一度の検査をすすめられた。 因みにグループ1は完全の良性、2はほぼ良性、3は要注意の良性、4は悪性とは言えないが、かなり悪性に近い、5は完全な悪性と分類される。 私は早めの発見でぎりぎりセーフといったところだろうか。 肉類の取り過ぎが原因の一つだそうで、野菜中心で肉でも脂肪分の少ない鶏肉がいいようだ。 最近は年齢もあって、肉より魚が多くなり、野菜も多く取るようにしているのだが、こうした食生活の改善も効果が出るのは20年後ということで、その頃には私の寿命も尽きている。 また牛乳は大腸がんを防ぐに大いに効果があるようで、小さい頃から牛乳やヨーグルトを摂る様にするといいらしい。 毎年ペット検査はしているが、検査自体を多少なめていて、その必要性をあまり感じていなかったが、こうした結果がでると定期的な検査の必要性を認めざるをえない。 先ずは一安心ということで、明日からの夏休みを心おきなく迎えられる。 皆さんもどうぞご自愛のほどを。 ●8月2日 うだるような暑さを通り越して、レーザービームのように身体の芯まで暑さが差し込んでくる。 暑さで眼が覚め、眠れないのでテレビをつけるとオリンピックで一喜一憂し、毎日寝不足が続く。 この暑さのせいもあるのだろうか、常設展ということもあって、画廊も閑散としていて、開店休業状態である。 5日から13日の月曜日まで夏休みをとらせていただくことになっているが、その前後は夏向きの涼しげな作品が飾られているので、暑さしのぎに是非画廊にお越しいただきたい。 ●8月1日A ジャカルタのアートフェアーの模様が紹介できなかったのでこちらも写真を紹介させていただく。 ●8月1日 ASAYAAFの会場の様子がスタッフの島田から送られてきた。 今日から28日まで開催される。 ●7月31日 今日も暑いが、気合を入れて久し振りに画廊と月島にある倉庫の整理。 オークションに出品する作品の仕分けとお客様の預かり品を自宅の倉庫に移動することに。 お客様の預かり品だけで月5万円払っている月島の倉庫が一杯。 更には入金がまだのまま、取り置き作品がこれまたたくさんあって、これをどうするか思案のしどころ。 3年以上何も言ってこなければ、キャンセルということで処理したいのだが、その辺の判断が難しい。 以前に長い間取り置きになっていた草間弥生のオブジェ作品があり、再三の催促にも画廊に見えることもなく、返事がないままに時が経過し、新たなスペースに引越しする折に処分してしまったことがある。 ところが2年前に、突然そのお客様がその当時の請求書を持って支払いをしたいとやってこられた。 他にも数点の作品が未払いのまま取り置きになっていて、1万円だけが手付金として支払われていた。 草間作品を売却してしまった旨を話し、先ずは他の作品の支払いに充てて欲しいとお願いしたが、草間は当然置いてあるものと思っていたと言われる。 長い間に草間のその作品は10倍ほどに値上がりをしていて、お客様の気持ちも解らなくはないが、10年以上を経過していて今更といった思いもあり、私もかなり強い口調でお断りをさせていただいたことがあった。 こんな事もあって、お預かり作品の処理には気を遣うが、3年を超える未払いの作品については、倉庫代もかさむことから、こちらの判断で処分をさせていただいてもいいのではないかと思っている。 お客様にもその辺の事情をご理解いただき、未払いの作品については何とぞよろしくご配慮をお願いをしたい。 ●7月30日A 奈良美智展はいつもの美術館の展覧会と違って、圧倒的に若者が多く、中高年は殆ど見かけない。 展覧会のタイトル「君や僕にちょっと似ている」の通り、あどけなさ・可愛らしさが若者には身近に感じるのだろう。 入り口の巨大なFRPの作品に先ず眼を奪われるが、新しい試みのブロンズ作品は、重い硬質な材質がそう見せるのか、堅苦しくて、奈良作品には似合わないように思えた。 ベニヤ、ダンボールの作品も保存性に疑問符が残るが、そんなことお構い無しの旺盛な制作意欲には圧倒される。 心に残るのはキャンバス作品で、質感の美しさに改めて驚かされる。 ほわんとした色のベールに身体が包まれ、きらりと光る眼は心まで射止められてしまいそうだ。 草間や村上のようなアクの強さはないが、癒し系が好きな私には、どちらを取ると言われると、奈良に軍配を上げる。 海風に癒され、奈良に癒され、暑い日差しもどこか柔らかく感じさせてくれる一日となった。 ●7月30日 暑い日曜日、思い立って葉山のヨットハーバーに大学の後輩達の練習を見に行ってきた。 何十年ぶりだろうか。 ハーバーの様相はすっかり変わってしまったが、汐の香りも波の音もあの当時のままで、学生時代にタイムスリップしてしまったようだ。 舟は沖合いに出ていて、後輩達とは顔を合わせないままに帰ってきてしまったが、海風に吹かれながらヨットの帆走する様子を見ることができただけでも大満足。 当時通った食堂は見違えるようにきれいになっていて、そこで昼を食べて、横浜市美術館でやっている奈良美智展に向かう。 葉山美術館の松本竣介展も見たかったのだが、こちらはすでに終わっていて、見ることができなかった。 ●7月28日 昨日は日本一暑いといわれる熊谷近くのゴルフ場で高校のクラスコンペ。 炎天下39度という殺人的な暑さで、何でこんな時期にこんな場所でと幹事を絞め殺してやろうと思ったくらいに暑かった。 スコアーは推して知るべし。 終わって夜は頭がボーとしている中、祖師ヶ谷大蔵にある創業50年の老舗の洋食屋「キッチン・マカベ」でコレクターの元NHKアナウンサー・小池保氏と抽象画家の浜田浄氏、それに銀座・枝香庵のオーナー荒井さんと会食。 偶々、枝香庵の浜田浄展で知り合った声優・兵藤まこさんのご実家がこのお店ということもあり、また小池氏が今月始めに祖師ヶ谷大蔵に引っ越したのと兵藤さんがNHKで声優のお仕事をされているということから、一度是非訪ねようということで、今回の食事会となった。 兵藤さんは10代の頃に資生堂の専属モデルとしてエメロンシャンプーのテレビCM等で活躍した元アイドルで、現在は声優の仕事をされていて、文化学院でも講師も務められている。 兵藤さんは浜田氏の作品のコレクションをされていて、私も浜田氏とは新宿の頃からの長いお付き合い、更には浜田氏と荒井さんは高知の同郷というそれぞれに縁があって、このメンバーが集まることになった。 老舗だけあって、6時を過ぎるとどんどんお客様が入ってきて、その繁盛振りがうかがえる。 昔ながらのメニューばかりで、私はどちらかというと洒落たフランス料理やイタリア料理よりはこちらが大好物の安上がり人間なので、出てきた野菜サラダ、ポークカツ、メンチカツ、クリームコロッケ、アジフライの盛り合わせ、鳥の串焼き、付け合せのナポリタン、最後に締めのオムライスとどれも美味で大満足。 四日前にも上野広小路の有名な洋食屋さん「さくらい」に知人家族を連れて行ったばかりだが、お子様ランチ真向きの私にはこういう食事はいっこうに飽きない。 その上、美人の兵藤さんが一緒と来ては、昼のゴルフの疲れなど、どこかに吹っ飛んでしまった。 我が家からもごく近いところにあるので、是非これからも贔屓にさせていただく。 ●7月26日 ジャカルタのアートフェアー「アートバザール」の展示が始まった。 インドネシアの画廊協会会長エドウィン氏のセレクションによるジャパンブースが設けられ、7軒の画廊から作品が選ばれ展示される。 ●7月25日 今日は暑い中を一日力仕事。 スタッフの島田がジャカルタに出張中で、男手は私だけ。 8月後半に予定をしているオークションの仕分けとその後すぐにある韓国の慶州、光州のアートフェアーへの出品作品の送付準備でくたくた。 慶州の私共のブースには夏目麻麦、堀込幸枝、展覧会が終わったばかりの井澤由花子の大作を出品する。 別に設けられたVIPスペースには呉亜沙と岩渕華林の大作を展示する予定で、光州は韓国作家3名と柳澤裕貴を展示する予定である。 世界遺産の慶州と光州アートビエンナーレがある光州で観光気分を満喫できると言って、家内を連れて行くことにしたが、大作ばかりの展示で話が違うと文句を言われるのは目に見えている。 ●7月23日 京橋ものがたり館という小さな施設が出来た。 京橋に関する資料をここに集め、ここから京橋町興しを始めようということで造られた。 場所は中央通を渡った先の秋葉ビルの3階にあり、ここのオーナーである秋葉薬局さんが提供をしてくれた。 この地域は居住人口が何と20数名という少なさで、殆どが仕事関係とあって、地域への帰属意識が少なく、連帯してことを進めようにも何ともしがたい難しさがある。 更には銀座日本橋と違って百貨店がなく、集客力もいま一つという商業地区と言うよりオフィス地区と言ったほうががよく、町興しといったことでは銀座日本橋に一歩も二歩も遅れを取っている。 私もこの地に来て30年経つが、そうした動きが全く見られなかっただけにようやくという感があるが、私も京橋界隈を提案し、何とかこの地域を知ってもらおうと頑張ってきただけに、こうした動きは大歓迎である。 都市計画のNPOの方や大学の建築関係の方が地元の有志の方とともに集まっていたが、こうした人たちも京橋をどう特徴付けたらいいか悩んでおられた。 そこで私が、京橋界隈の成り立ちから話をさせていただき、この界隈には多くの画廊や古美術店、ブリジストン美術館、国立近代美術館フィルムセンターなどがあって、歌舞伎発祥のゆかりの地でもあることから、文化の香り豊かな町をキーワードに是非町興しをしていただきたいと提案させていただいた。 近隣の新しいビルも完成間近で、この界隈の大きな発展が見込まれているだけに、私も及ばずながらお手伝いをさせていただくつもりでいる。 ●7月21日 昨日は大腸の内視鏡検査に行ってきた。 数年前にいくつかポリープが見つかり、結果は良性で安堵したが、先月のがん検診で念のため再検査をしたほうがいいとの診断が下された。 そう言われただけで震え上がってしまう極め付きの弱虫と、人一倍の痛がりなので、今回は恐る恐るで全身麻酔をかけてもらうことにした。 看護婦さんに耳元で終わりましたよ囁かれるまで気がつかず、こんな楽なことはない。 前回はおなかに空気が送り込まれる度に、ワーとかギャーとか喚いて、ポリープごときでこんなに大騒ぎする患者も珍しいと看護婦さんにあきれられたが、今回はおとなしいものである。 ポリープが一個見つかり除去をしたそうだが、出血が止まらないのでクリップで止めてあるとのことで、3日間は運動禁止だそうだ。 何だか大変そうに聞こえるが、痛くも痒くもないので実感が湧かない。 ゴルフも畑仕事も散歩も駄目ということで、日曜日はおとなしく読書三昧と料理の腕でもふるうことにするか。 ●7月19日A 作家でもあるF・K氏の膨大なコレクションの中から珠玉の作品250点を一堂に展示する「F氏の絵画コレクション」展が7月28日から8月26日まで豊橋市美術博物館で開催される。 優れた美術家の目を通った作品は個性溢れるものばかりで、特に今は見過ごされがちな近代美術のコレクションは眼を見張るものがある。 そうした作家達の作品も名を成してからのものは少なく、いち早く見出した氏の眼力に、これぞ個人コレクションの真髄と言わしめるものがある。 そればかりに留まらず、現代作家にも眼を向け、無名時代の奈良美智の作品や私共で発表している山本麻友香や開光市なども多数コレクションしている。 今回は約100名の国内作家に絞り展示されるが、とても書ききれないが一部の展示作家を記しておく。 麻生三郎、糸園和三郎、猪熊弦一郎、海老原喜之助、小山田二郎、香月泰男、加納光於、草間弥生、駒井哲郎、清宮質文、鳥海青児、鶴岡政男、中村宏、中本達也、難波田龍起、野見山暁治、浜口陽三、浜田知明、平賀敬、福沢一郎、森芳雄、山下菊二、山口薫、若林奮、脇田和等など錚々たる作家達である。 新しい世代では有元利夫、北川健次、奈良美智、開光市、山中現、山本麻友香、山本容子といった作家が名を連ねている。 ●7月19日 先の日記でも紹介させていただいたASYAAFの詳細が送られてきたので紹介させていただく。 今年で5回目を迎える朝鮮日報主催ASYAAF(Asian Students and Young Artists Art Fastival)は、公募を通じ、国内やアジア地域の大学生、大学院生と満30歳以下の若い作家777人を選抜して彼らの作品を展示する韓国最大の"アートフェスティバル"である。 このアートフェアは、韓国、中国、日本、シンガポール、ベトナム、インド、インドネシア、フィリピン、台湾などのアジアの多くの国々が参加し、選抜された作家の作品3,000余点一ヶ月間展示される。 展示スペースは、複合文化空間として新しく改装された文化の駅ソウル284(旧ソウル駅舎)で8月1日(水)から8月26日(日)まで開催する。 現在、私共で個展をしている浅井飛人もここに選ばれたことで、韓国、ジャカルタのギャラリー・コレクターの眼にとまり、アジアに大きく飛躍することになった。 今回は旧ソウル駅という歴史的な建造物での開催となり、絶好のロケーションということもあって、私のところから推薦をした4人のアーティストもこれを期に大きく羽ばたいてくれることを願う。 ●7月18日 連休は河口湖で友人達とゴルフ。 益々下手になり、今回を機にスコアーなしの楽しみゴルフに転向宣言。 梅雨明けとともにいきなり猛暑。 河口湖の爽やかさをそのまま袋詰めにして持ってこれたらと思う。 九州方面の豪雨はお気の毒だが、今年の梅雨は宵に雨が降ることが多く、気温もそれほど高いくなく、どちらかというと過ごしやすい日が続き、今年の夏を多少なめていたきらいがあったが、どっこいそうは行かない暑さが突然やってきた。 ただ、私自身は体調を考えると、梅雨明け大歓迎で、汗をかくことで体のだるさがなくなってきた。 今日もこの暑さの中を50点ほどのギャラリー椿オークション用の作品の集荷にお客様のところに出かけることになっている。 何人かの方から既にオークションの出品依頼が来ていて、作品が揃ったところから随時ホームページにてリストアップをして行く予定である。 新たにリスト送付をご希望の方は、画廊に連絡をいただければ出来次第送付させていただく。 ●7月14日 お客様の美術品の処分の際に、昭和天皇の終戦勅語の原文のコピーをいただいた。 先代の方が、鈴木貫太郎首相と親しくしていた関係で、軍部に握りつぶされないように、この原文を一晩だけ隠し持つように言われたそうで、翌日8月15日の玉音放送に無事間に合うことになったそうだ。 1,2箇所添削がされている部分も有り、その時の内閣の混乱振りもうかがえる。 日本国民にとって悪夢であった戦争を終結させる貴重な資料であり、私のような戦後人間にも今一度歴史を振り返させるいい機会となった。 ウィキペディアを見てみると次のように書かれていた。 終戦詔書は大東亜戦争終結ノ詔書とも呼ばれ、天皇大権に基づいてポツダム宣言を受諾する勅旨を国民に宣布するために8月14日付けで詔として発布された。 大まかな内容は内閣書記官長・迫水久常が作成し、8月9日以降に漢学者・川田瑞穂(内閣嘱託)が起草、更に14日に安岡正篤(大東亜省顧問)が加筆して完成[4]し、同日の内に天皇の裁可があった。 大臣副署は当時の内閣総理大臣・鈴木貫太郎以下16名。 喫緊の間かつ極めて秘密裡に作業が行われた為に、起草、正本の作成に充分な時間がなく、また詔書の内容を決める閣議において阿南惟幾陸軍大臣が「戦局日ニ非ニシテ」の改訂を求めて「戦局必スシモ好転セス」に改められるなど、最終段階まで字句の修正が施された。 このため、現在残る詔書正本にも補入や誤脱に紙を貼って訂正を行った跡が見られるという異例な詔勅である。全815文字とされるが、誤りという説もある。 ●7月13日 いじめの問題が大きく取り上げられている。 そうした問題が起こる度に、私の小学校の頃のことが思い出され、胸が痛む。 というのも、私の小学校時代にもそういうことがあったからである。 一人の女の子を汚いといって、男子生徒みんなでからかったり、運動会のフォークダンスの練習などでも、彼女だけは手を組んであげないといったいじめをしていた。 そうした彼女に対し、担任の先生は身体を張ってかばい続け、私達男子生徒を叱り、いじめをやめさせた。 何がそうさせたのか、付和雷同、みんながやるから自分もやるといったそんな単純な思いだけだったような気がする。 彼女はそんな毎日をどんな思いで過ごしていたのかと思うと、忸怩たる思いがする。 今では、我がクラスは大変仲がよく、60年近くが経つ今でもしょっちゅう顔を合わせたり、クラス会も頻繁に開かれる。 その中に彼女は何ごともなかったように加わり、幹事役まで務める様になった。 恐らく、あの先生がいなければ、彼女はもっと深い心の傷を負い、私達もそのことに重い罪悪感を持ち続けていたに違いない。 素晴らしい先生で、その後国立大学の教授となり、80歳を超えた今でも名誉教授として大学で活躍をされているが、あの頃と変わることなく、私たち悪童に親しく接してくれる。 みんなが心から尊敬できる先生に出会えたことは何にも代えがたい宝であり、一生の友を得られたことも先生のお陰と心より感謝している。 恐らく、学校ではこうしたことは昔も今も常にありがちなことだと思う。 そうしたときに身体を張って庇い、涙を流しながら怒ってくれる先生が果たしてどのくらいいるのだろうか。 保身ではなく、身を捨てて立ち向かう先生がいてくれれば、命まで捨てることは無かっただろうにと悔やまれてならない。 ●7月12日 昨日は知人からサッカーのなでしこジャパンと男子代表のオリンピック壮行試合のチケットをいただき、生まれて始めてのサッカー観戦に行ってきた。 知人はゴルフやサッカーのビッグイベントのプロデュースをしていて、偶々彼の会社を訪ねた折に、サッカーのいいチケットはないのかと言うと、スタッフが今日でよければと、メーンスタンドの特等席のチケットをもらってしまった。 急な話で、子供達や友人達に声をかけるが、都合がつかない。 我が作家の一人で南アフリカ弾丸ツアーまで実行したつわもの・富田有紀子も既にチケットを手に入れ、早々に国立競技場に向かっているという。 ついチケットをなんて言ってしまった私だが、実はサッカーには全く関心がなく、誰も行き手がなく仕方なく私が行く羽目になった。 私は巨人・大鵬・卵焼きの口で、大の巨人ファンであり、更にはラグビー大好き人間でもある。 息子が小学校からずっとラグビーをやっていて、現在も大学のラグビー部の監督をしていることもあって、自然とラグビーに目がいくようになり、今ではもっぱらラグビー観戦が主流となってしまった。 そんなこともあって、サッカーにはさっぱり興味がなく、テレビでも殆ど見ることがない。 この壮行試合でも知ってる名前は沢ぐらいで、それも「沢たまき」と言い間違えてしまう(知らないだろうな)。 何故サッカーが好きになれないと言うと、先ずはラグビーと違ってあまりに点がは入いらな過ぎで、見ていてじれったくてしょうがない。 ちまちま、せこせこと行ったり来たりで見ていて女々しくてしょうがない。 ラグビーのように真っ向からガツンとぶつかり合う、まさに男のスポーツ、迫力が違う(ラグビー音痴の友人に言わせると、おしくら饅頭しているばかりで、どこがおもしろいと言われるが)。 今一つはサッカーがあまりにメジャーになりすぎてしまい、益々マイナーになってしまったラグビーファンのやっかみもある。 更には、アマチュア精神をモットーのラグビーの清清しさに比べ、プロ化した派手派手しさが何とも嫌らしい。 顔に奇妙な刺青みたいなものをして、選手でもないのに青いユニフォームに身を固め、ワーワーキャーキャーうるさくてしょうがない。 ジャニーズ事務所じゃないんだからもう少し静かに観戦できないものだろうか。 こんな減らず口を叩いていると、サッカーファンには袋叩きにされてしまいそうだし、ましてや高価なプラチナチケットをくれた知人には顔向けが出来ないのだが、ラグビーへの熱い思いは不変で、重ね重ねの無礼をお許しいただきたい。 ●7月11日 山本冬彦さんがブログでアートフェアーについて書かれていたので紹介させていただく。 「一般の人にとって画廊は敷居が高く、有名な老舗料亭のように一見さんは行きずらい存在です。 また、画廊というのは日本画・洋画・版画など多様なジャンルがある専門店で、絵を買いたいという素人の人にはどこへ行ったらいいか分からないし、いろんなジャンルの専門画廊を一つづつまわるのも大変です。 そんな中で最近盛んに開催されるアートフェアは一般の人にも行きやすいし、イベントもあったりして楽しいし、一度にいろんなジャンルの作品を見られるということでアートの普及にはとても貢献していると思います。 但し、アートフェアが頻繁に開催されるため、アート作品はアートフェアで買うものということで、画廊に行かなくなったという話も聞きます。 アートフェアはいわばアートの見本市のようなもので、そこでよい作家や画廊を見つけたらその画廊へ来てもらうことで深いアートファンになってもらうことが大事かと思いますが、そこまでつなげられず、アートフェア限りになっている人が多いようです。 一方、われわれのようなコレクターにとって最初の頃は普段行かない画廊や見たことがない作家の作品を見ることができたのでおもしろかったのですが、最近はどこのアートフェアへ行っても知っている作家や似たような作家ばかりで新鮮さがなくなってきています。 アートの見本市であるアートフェアでアートファンの裾野を広げることと、独自性と魅力で専門店である個々の画廊に来てもらうことの関連性を構築しないと、画廊の存在意義がなくなってしまうと思います。」 確かに仰言るとおりで 、アートフェアーでアートファンの裾野が広がっているように見えるが、その裾野の人たちを各画廊が取り込めないでいるのが現状である。 フェアーで色々なジャンルの作品を見ることは確かにいいことで、そこに出会いがあって、美術品を購入することは素晴らしいことである。 ただそこで終わらずに、出会いがあった作家や興味があるジャンルをより深く掘り下げてもらうことが、フェアーに参加する本来の目的である。 アートフェアーとはいわゆる見本市のようなもので、企業に例えれば自社製品の宣伝の場所でもある。 そこで得た情報からユーザーは製品を選ぶ目安とする。 限られた壁面にそれほど多くの作品を飾れるわけでもなく、たくさんの作家を紹介することも出来ない。 3日や5日という限られた会期の中で、如何に画廊や作家に関心を持ってもらい、そうした人たちを画廊に引っ張って来ることを考えなくてはいけない。 個展を見てもらうなり、そこのオーナーやスタッフと話をしながら、興味を深めてもらうのが本来の私たちの仕事である。 海外のフェアーで思うのは、そこで知り合ったお客様や画廊とコレクションや展覧会を通じ、長いお付き合いが始まることである。 そのためには、作品を持っていくだけではなく、たくさんの画廊の宣伝材料や作家資料を持っていくことが重要となる。 イベントやフェアーに人が集まり、画廊に人が来ないでは、画廊を持っている意味がない。 フェアーに参加する以前に、先ずは企画力と発進力を高めて、一人でも多くのお客様に画廊と作家の存在を知ってもらうことで、画廊への集客力を高めることが先決である。 ●7月10日 7月14日から9月2日の丁度夏休みに合わせて、府中美術館で「親子で旅する展覧会」と題した展覧会が始まる。 油絵や版画、立体作品などの様々なジャンルの作品の「ささやき」に耳を傾けながら、親と子で美術の見方・楽しみ方を体験する展覧会である。 寺田コレクションから府中美術館に寄贈された山本麻友香や呉亜沙の作品も展示される予定である。 山本麻友香の作品のペンギンを型抜きして、顔の部分を抜き取り、玄関に置いて子ども達に記念写真を撮ってもらったり、呉亜沙のウサギの立体がすごろく遊びの案内をしたりと、親子で美術を楽しむ趣向になっている。 海外のフェアーで驚くのは、実に多くの子ども達が親に連れられて、フェアーを見に来ることである。 また幼稚園の生徒が先生に連れられて、お行儀よく並んで見に来る光景もよく見られる。 美術館が敢えてこうした企画をしなくても、海外では当たり前のように子ども達を連れてくるのを見ると、日本ではまだまだ美術が特別なものと見られているのかもしれない。 尚、新宿の佐藤美術館でも呉亜沙のワークショップによる「小麦粉粘土で遊ぼう〜お母さん(お父さん)と子ども」が企画されている。 ●7月9日A ギャラリー椿オープン以来の一番長いお付き合いの望月通陽さんのミュージアムがオープンした。 大分合同新聞の記事から引用させていただく。 柔らかな光が差し込む館内に、人物や動植物をモチーフにした染色、彫刻など約120点が並ぶ。 大分市下宗方にオープンした美術家、望月通陽(みちあき)さん(静岡市在住)のミュージアム。 柔らかな光が差し込む館内に、人物や動植物をモチーフにした染色、彫刻など約120点が並ぶ。 陶芸、ガラス絵、版画、本の装丁など多彩な創作活動で知られる望月さんは「大分の光と風を得て、新たな創造の場ができた」と話している。 大分川の土手と田んぼに囲まれた真っ白なミュージアムはカフェ「サリーガーデン」に併設。 観賞の合間にお茶やケーキも楽しめる。 作品の大ファンだったオーナー橋本栄子さん(48)がカフェを開店する際、ロゴやシンボルマークを依頼したのをきっかけにミュージアム開設の意向を伝えた。 その後も熱意を伝え続け、全国初の常設ミュージアムが実現した。 橋本さんは「望月さんの作品を眺めていると心に静けさを取り戻したり、くすっと笑えたり、ほのかな幸福感に包まれたり…。すてきな作品を多くの人に見てもらいたくて」と説明する。 望月さんはミュージアムの設計にも参加。年4回、作品の企画や展示も自ら手掛けることにした。 「都会にはない環境に触発され、大分発の作品がたくさん生まれそう」と望月さん。 橋本さんも「ワクワクするような面白いことを次々やっていきたい」と話した。 入場無料。営業は午前10時〜午後6時。無休。TEL097−542−4446。 望月通陽さん 染色やブロンズなど多様な技法で創作活動を行う。 「光文社古典新訳文庫」「宮本輝全集」などの装丁も手掛け、1995年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。 画文集「道に降りた散歩家」で2001年ボローニャ国際児童図書展賞ラガッツィ賞受賞。 1953年静岡市生まれ。 ●7月9日 中国のオークション会社の鑑定・査定会が昨日、今日の2日間行われた。 お客様からの依頼品があって、先週初めから時間の予約をしようと何度も電話したが、ずっと話し中で繋がらない。 ようやく繋がり、今日の午後に作品を持って行くことになったが、待合室が満員の大盛況。 聞いてみると今日だけで100人の人が来ているという。 電話が繋がらないはずである。 知人の紹介で知り合ったMさんが日本側の代表を務めている事もあって、長い間待っている人を尻目にすぐに見てもらうことができたが、結果は残念。 依頼者からは中国から持ってきた名品と聞いてきたが、鑑定では日本製とのことであった。 他にもいくつか頼まれたものがあったが、面倒くさそうに見るだけで、どうもお客様の思い通りの結果は得られなかった。 偶々居合わせた知り合いの業者も、本物なら億を超えるものばかりだが、全て数十年前に中国で作られた贋物で、全く値打ちがないと言われたそうだ。 前にも日記に書いたが、近代美術などは私たちもある程度真贋はわかるが、こうした古いものはさっぱりわからない。 以前に別の中国のオークション会社に出したものは、贋物といわれたのだが、後日電話がかかってきて、贋物でも売ることが出来るので買い取りたいと言ってきたことがある。 その時は偽物でも値が付くんだと喜んで買ってもらったが、贋物とわかってオークション会社が買うはずもなく、きっと買ってしまえば本物として売ってしまうに違いないと後で悔やんだが、時既に遅しである。 また、昨年の秋に出品した作品は高額で落札されて喜んだが、入金は半年後だった。 あまりに遅いので、戻して欲しいといったが、お客様が間違いない人だから、もう少し待って欲しいと言われて、半年経ってしまった。 半年も落札したお金を払わない人が間違いない人なのだろうか。 そんなこともあって、中国のオークション会社は全く信用していないのだが、お客様の依頼があるのと、Mさんとのお付き合いもあって、こちらのオークション会社に最近はお願いをするようにしている。 待合室には大勢の人が一攫千金を夢見て並んでいるが、いくら中国バブルとはいえ、そう上手い話は転がっているはずもなく、鑑定する人が面倒くさそうにするのも致し方ないのかもしれない。 私もここに来ている人同様に、あわよくばの浅ましい顔つきをしているのではと、惨めな思いをしながら帰ってきたが、何となくこの狂想曲も終わりが近づいているように思えてならなかった。 ●7月7日 空梅雨と思っていたが、ここ2,3日の雨模様と蒸し暑さで体のだるさもピークに。 代謝が悪く、あまり汗をかかない私には、こういう気候が一番こたえる。 暑いなら暑いでカァッーという暑さになると汗も出て、かえって体がシャキッとするから不思議だ。 恒例のギャラリー椿オークションは、そうした暑さの最中の8月23日〜26日を予定している。 日記をご覧の方で美術品の処分をお考えの方は、この機会にオークションに出品をされたらいかがだろうか。 来週もお客様のお宅へお伺いをして、かなりの点数をお預かりすることになっている。 また、この機会に掘り出し物を楽しみにされている方も多く、出品のリストも揃い次第、順次紹介をさせていただくので、お楽しみにお待ちいただきたい。 このオークションの準備とその後に控える海外のアートフェアーのこともあって、お盆前の8月5日から12日までを夏休みとさせていただき、お盆の間にオークションとフェアーの準備に充てる事にしている。 ●7月6日 個展に際し、井澤由花子のフェースブックのコメントを転記する。 「本日よりギャラリー椿にて個展開催します! 今回のシリーズは、自身の出産時に感じた風景をもとに描いています。陣痛のときに描いたクロッキーや、こまぎれ睡眠で一週間ろくに眠れなかったときにみた幻覚などもとにしています。 世の母親はみんなこんな風なのかと…。 でも自分の表現に自信がもてなくて、不安で悩みながら胃をこわしたりしながら描きました そんな作品を見た椿原さんにほめていただいたときは本当にほっ...としました」 お疲れ様。 出産の最中の制作は、それは大変なことだったに違いない。 新たな命を宿すことで、今までとは違うイメージが浮かび上がってくることは、同じように妊娠・出産・育児を経験しながら制作を続けた山本麻友香からも聞いているが、母親の本能的なものがそうさせるのだろう。 そうした産みの苦しみから生まれた井澤の作品には、新たな命への喜びと感謝が画面いっぱいに満ち溢れていて、見ている私たちにもその思いが伝わり、温かな気持ちに包まれる。 女性は強し、母は強しである。 ●7月5日A 京橋界隈はいよいよ明日からスタート。 初日は夜8時まで15軒の画廊が開けて皆様をお待ちしている。 井澤展に続いて、今週ずっと徹夜でようやく完成したという浅井飛人の作品を紹介させていただく。 彼の作品は金属をたたき出して作る鍛金という技法と木彫を重ね合わせた立体作品なのだが、たたき出しにかなりの時間を要するので、おのずから制作量は限られてくる。 それでも今回は広い方のスペースを使うこともあって、必死の頑張りで6点の新作を作り、それに加えて先日の釜山のアートフェアーに出品した作品など合計9点の作品が並ぶ。 昨年のジャカルタの展覧会では完売し、引続きのソウルでも殆どの作品が売れていて、韓国の5大財閥の一つコーロン財団もアートフェアーなどで既に数点の作品をコレクションするなどアジアでの人気はなかなかのものである。 日本では今回3回目の個展となるが、アジア同様に好結果につながることを期待したい。 ●7月5日 8月にはいると毎年恒例の朝鮮日報主催によるASYAAFが始まる。 韓国の美大生から選ばれた700人の学生が、それぞれ割り当てられたブースに自分の作品を展示し、即売をする。 ゲイサイみたいなものだが、各作家2,3点出品すると、おおよそ1500から2000点が並ぶからそれは壮観である。 1ヶ月の期間中、大勢の人が詰めかけ、今までだと約8割が売約となるというから凄い。 ただし価格の上限があり、どんなに大きくても日本円で25万円までと限定されている。 それにしても学生の作品がこれだけ売れるのには驚かされる。 更にアジアゾーンがあり、アジア各国から30歳以下の作家50人ほどが参加する。 その中の日本人枠を委嘱されていて、今回推薦させてもらった中から次の4名の日本人アーティストが出品することになった。 先ずは私のところで個展をした東北芸工の佐藤未希。 順に多摩美を今年卒業した岩田ゆとり、安井春菜、女子美卒の高橋舞子である 他にもいい作家達がいたのだが、先方の意向でこの4名に決まった。 ●7月4日 しらみず美術で始まった「弓の会」のオープニングに行ってきた。 「弓の会」とは日本テレビの美術番組「美の世界」で紹介された作家有志が、その時の担当アナウンサー井田由美さんを囲んで、一年に1、2回集まって食事をしようということから始まった。 メンバーは斉藤研、入江観、馬越陽子、吉武研司、内田あぐり、金井訓志、櫻井孝美、安達博文と美術大学の現、元教授ばかりだが、どういうわけか私が部外者でひとりだけ入っている。 何度か集まるうちに、絵描きなんだから展覧会をしようということになり今年で4回目となり、13日まで開催されている。 ●7月3日 7月6日から恒例の京橋界隈2012「歩いて探すアート」が始まる。 京橋界隈は地域アートイベントのはしりと自負していて、これが先駆けとなり、各地で地域関連イベントやローカルなアートフェアーが開かれるようになった。 今やあまりにそうしたイベントが多くなり、京橋界隈も新鮮味が薄れてきたが、続けることに意義ありと今回も15軒の画廊が参加して、一斉に企画展を開催する。 私のところは浅井飛人の立体展とGTUにて井澤由花子の水彩展を開催する。 浅井の作品がぎりぎりになりそうなので、まずは井澤の作品を紹介させていただく。 彼女の作品は一昨年の美術雑誌アーティクルの公募展の審査を頼まれた際に眼にとまり、発表を依頼した。 水彩画による風景に点景人物をあしらった作品が独特で、他の油彩画にも勝る強い印象を受けたが、今回届いた作品はそれ以上に私の眼を奪った。 通常の淡く儚げな水彩画と違い、水彩力といったらいいのだろうか、力強いインパクトある作品はとても水彩画とは思えない迫力に満ちている。 油彩画では表現しづらい滲みやかすれを効果的に使いながら、ダイナミックな画面を作り上げていて、その独自な表現力は卓越しているように思う。 今の流れから一線を画した作家達の中から、昨日の日記で紹介した夏目麻麦のように今後に期待する作家達が少しづつ出てきたようだ。 ●7月2日 夏目麻麦の作品が河出書房新社刊・赤坂真理の「東京プリズン」の表紙を飾った。 本の帯には文学史的事件とセンセーショナルに書かれていて、新聞各紙でも次のような書評で話題騒然の本だそうだ。 この気宇壮大な力作に、私は感動したー朝日新聞・松浦寿輝氏 これこそが文学の仕事だろうー産経新聞・石原千秋氏 文学史上きわめて重要な問題作だー毎日新聞・田中和生氏 戦争と戦後のことをを書きたい、全ての日本人の問題として書きたいと戦後生まれの作者が語る。 ある民族や国家が、あれだけの喪失をたった60年や70年で忘れてしまうことは、本当はありえない。 全ての同胞のために書いたという渾身の一作のようだ。 戦後すぐ日本の混乱期に生まれた私だが、戦争・敗戦という事実を実感しないままに今まで来てしまった。 今一度この本から親達が体験した戦争・敗戦という現実を見つめなおしてみたい。 |