「くま」とピクニックに出かけた私 ――
朗読会ではまず、川上弘美著『神様』を読み進める。
神様のように泰然とした「くま(神・自然)」と私との交流が描かれ、
スクリーンに映し出される絵ときと共に、大人向けの温かいファンタジーが奏でられる。
続いて、『神様』の2011年バージョン『神様2011』の始まりが告げられる。
川上弘美は、『神様』の物語をそっくりそのまま、3.11後に移し替えた。
彼女の静かな怒りが上書きされた違和と不安の世界を、
私はクマと歩いてゆく。絵の世界もガラリと一変する。
しかし汚染された空気の中にあっても、超越性を裡に秘めた「くま」の、
大らかに包み込むような慈愛だけは、いささかも揺るいではいなかったのである。