菅野美榮氏インタビュー
・・・タイトルは「coverd」
たくさんの忘れてしまっている記憶だけれども、その記憶が積み重なって自分になっている。それがなければ私ではない。そういうものが時々不意に浮かび上がる。それを包み込んで、見えるような見えないようなおぼろげな表現でみせています。
・・・展示は平面と立体。
立体を展示したのは前回からで、もともとは蝋を使った平面作品を制作していましたが、蜜蝋を使いはじめたら質感がすばらしくて、だんだん蝋が作業によって厚くなっていき、それでこういう立体の作品になってきたんです。
・・・蝋を使われたきっかけを教えていただけますか。
いちばん初めに蝋を使ったのは、高校時代に蝋画(蝋を塗り引っ掻き、そこに絵の具を塗り線描を残す技法)の創始者の豊田一男先生に学んでからです。それがとても面白くて、それからずっと蝋を使って描いています。以前NYに行ったときに、初めて入った画廊で蝋画を見せましたら、もっと大きな作品を描きなさい。と勧められたのですが、私自身日本で発表したかったものですから、90年に銀座のギャラリーで個展をいたしました。それ以来、ずっと蝋の仕事をしています。でも今回初めて蝋を使わない作業が始まってきたんです。
・・・平面を蝋を使わないで描かれたわけですね。蝋を使った立体と平面作品とのつながりというのは、どのように考えれば宜しいでしょうか。
平面はアクリルガッシュで描いています。立体では植物を題材ししていますが、たとえばタンポポの綿毛を表現したい場合は、立体の作品では難しいのですが、平面ならばイメージが出しすいですよね。私の中では平面も立体も表現としては同じなんです。
・・・立体でできなかったことを、絵画で再生されているわけですね。素材に植物を選ばれているのも、植物を人の一生のメタファーとして、生命の循環を捉えられているからではないかと思います。
そうですね。いつも私は行きつ戻りつしていて、それが段々と変化しながら変わっていくんです。それが私なんだと思っています。ただ記憶としては、太古の記録みたいなものもを閉じ込めるという意味合いもありますし、小さい頃に麦畑で鬼ごっこをして遊んだ記憶とかを、封じ込めている部分もあるんです。
・・・これからの展開はどのように考えておられますか。
表現の方法にはこだわらず自然に自分を出せる方法で制作していきたいと思っています。
〜7日(水)まで。
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