ギャラリー椿では2006年に引き続き小林健二の新作展を開催します。
また1990年代以降の作品と今回の新作を含めた作品集「ＭＥＥＭ」を同時に発行します。

小林健二の表現媒体は一見すると多枝に渡り、一言で表すのは困難ですが、そこには真の表現者の持つ一貫した世界があります。
平面や立体の作品から電気物理や科学に精通しているからこそ生まれる作品、あるいは作曲に至るまで、その表現のプロセスは様々です。

彼の作品世界と対峙する時、ある種の詩的精神を感じる方も多いはずです。
そしてそれはまた、深く自由な場所であります。
表面上では異なる小林の作品ですが、観る者（体験する者）が無意識的に受け取る感覚、それは「無限なる世界との交信」と言えるかもしれません。

　今回の新作展のタイトルとなっている「MUTANT」とは俗に『突然変異体』という意となります。何かが他の何かに変異していく過程　―　それは一見偶然のように見えながらも、非常にゆっくりと必然へと変化していく生物学的道すじです。
「イデア」と呼ばれる共通の場所から、生命体へと「ミュータント」したであろう私たちは、小林の作品から流れる波動から、体内深くに眠る自らの未知なる記憶を呼び起こされるようです。まるでそれは、デジャ・ビュのような既視感、さらには嗅覚から立ち上がる記憶の再生のような感覚的なものです。
　小林の作品を通して、私たちは時空を超えた、純粋な永遠の場所との交信チケットを受け取ることになるのかもしれません。

今回の展覧会では平面作品を中心に新作22点が展示されます。
どうぞご高覧くださいませ。

01　木の板に油彩　2740X2720mm　2008